島根半島の四十二浦巡りの地の一つ、松江市鹿島町手結の津上神社が住民有志の手できれいになった。裏山に放置されていた名物のこま犬を見に行けるよう、散策道を整備。朽ちた神木の跡に、真新しい鳥居を建立した。
手結地区は、今でこそ、集落外で働く勤め人が増えたが、もともとは漁業がなりわいの集落だった。神社の境内には大漁や家内安全を願う社があり「汚れがない」とされる海底の石を供えて、海での安全を祈った跡も見られる。
神社は1992年に遷宮があったが、資金不足が影響してか、参拝者を見守るこま犬は、造形が粗く安価な外国産に置き換わった。もともとあった来待石製で親子が一体になった珍しいこま犬「親子獅子」は、裏山にうち捨てられた。
さらに、落雷と虫食いで神木の松2本が朽ちたまま放置され、周辺には草木が茂り、うら寂しい雰囲気になっていた。
地区住民にとって唯一の神社で、年3回の祭りもあり、親しまれてきた場所。荒廃を見かねた若松隆さん(70)たち住民3人は「何とかするしかない」と昨年12月、自力で整備に乗り出した。神木は「八百万(やおよろず)の神」と記したプレートに活用。親子獅子を見に行けるよう、周辺の草木を刈って散策道を開き今春、整備を終えた。
神社の幡垣裕行宮司(72)は「氏子が減る一方で、維持運営が大変だった。ありがたいことだ」と喜ぶ。若松さんは「日当たりが良くなり、最高のパワースポットになった。四十二浦巡りで来る人にも喜んでほしい」と期待した。
(森みずき)