「着物アドバイザー」として松江市内を中心に活動している中島会美(えみ)さん
「着物アドバイザー」として松江市内を中心に活動している中島会美(えみ)さん

 浴衣姿で町歩きを楽しめる季節になった。基本の着方と、似合う浴衣の選び方、個性を出せる着こなし例を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 松江市内で和装の着こなしを提案する「着物アドバイザー」として活動する中島会美(えみ)さん(51)にポイントを聞いた。

着物アドバイザーの中島会美(えみ)さん

▷基本の着方 ポイントは首回りの空き具合
 まずは基本の着こなしのポイントを教えてもらった。
①    浴衣を羽織り、左右が均等になるようにそろえる。左側の襟が下、右側の襟が上になるように重ねる。
②    裾がくるぶしの少し上にくるように長さを調節し、ひもを結ぶ。へその少し上の高さでひもを巻き付けて前側で結ぶ。

裾がくるぶしの少し上にくるように長さを調節して腰にひもを結ぶ。

③    おはしょり(浴衣の余った部分)を整える。身八つ口(みやつぐち。脇腹部分に空いている穴)から手を入れ、だぶついた部分をぴしっと伸ばす。

おはしょり(余った部分)をピンと引っ張り、きれいに伸ばす。

④    おはしょりの上から②と同じ手順でひもを結ぶ。
⑤    帯を巻く。端の一部分を幅が半分になるように折り、左肩にかけておく。たすきのように残りの部分を斜めに下ろし、胴に巻き付けていく。帯を動かして巻きつけるのではなく、体をぐるぐると回転させて巻き付けると簡単に巻ける。

帯を巻くときはその場でくるくると回転して巻き付ける。

⑥    2~3回転させて余った部分を前側でリボンのような形に整えて結び、余った部分を内側にしまう。形が崩れないように右方向へ半回転動かし、背中部分で整えたら完成。帯をリボンのような形にするのは「文庫結び」と呼ばれる基本的な結び方。比較的簡単に結べて華やかさも演出できる。

帯は前側(おなか側)で結んでから後ろに回す。
リボンのような形を作って結ぶ「文庫結び」は基本の結び方の一つ。

 浴衣を着る時のポイントは「襟元とうなじ部分の空き具合を調整すると、きれいに仕上がる」と中島さんは説明した。襟元が詰まりすぎていると窮屈そうに見え、逆に空きすぎているとだらしなく見える。喉仏の下のくぼんでいる部分で襟元を合わせるとバランスが良くなる。首が長い人は少し上、短い人は下にずらすと良いという。後ろ側の襟は、うなじにぴったりと沿わせすぎず、少し引っ張り空間を作るときれいに着こなせる。

後ろ側の襟は首にぴったりと付けるのではなく、少し空間を作るときれいに見える。

▷「大人顔」と「子ども顔」 それぞれに似合う浴衣は?
 中島さんは「基本的には好きな浴衣を自由に着てもらいたいが、自分に似合う色やデザインを知っておくと服選びの幅が広がる」と話し、浴衣選びのポイントを教えてくれた。
 まず、自分が「大人顔」と「子ども顔」のどちらなのか、確認する。名前の通り、「大人顔」は大人びて凛とした印象を与える顔、「子ども顔」は子どものようにあどけなく、かわいらしい雰囲気の顔立ち。

 「大人顔」の特徴
 顔の横幅よりも縦幅が広い、額が狭い、目と目の間隔が狭い(目が中心に寄り気味)、小鼻がすっきりと小さい、鼻が高い、唇が薄い
 「子ども顔」の特徴
 顔の縦幅よりも横幅が広い、額が広い、目と目の間隔が広い(目が外側に離れ気味)、小鼻がぷっくりとふくらんでいる、鼻が低い(鼻の付け根から先端までのラインがなだらか)、唇が厚い

 「大人顔」の人は、写実的なデザイン、大ぶりの柄、すっきりとしたきれいめのデザイン、紫など落ち着いた色合いの浴衣が似合うという。「子ども顔」の人は、デフォルメ(単純化)されたイラストデザインの柄やチェック柄、黄色やオレンジ、ピンクなどかわいらしい色合いの浴衣がなじむ。好きな色や柄を中心に選びつつ、自分の顔立ちに似合うデザインも知っておくと参考になりそう。

浴衣にはさまざまな色、柄がある。自分に合うデザインを知っておくと、選ぶ時にヒントになるかもしれない。

▷ツヤを抑えたメークがお薦め
 せっかく浴衣を着るのであれば、メークにもこだわりたい。メイクアップアドバイザーとしても活動している中島さんにポイントを聞くと「ナチュラルで、ツヤ感を抑えたメークがお薦め。浴衣はカジュアルな服とされているため、ギラギラとした派手な化粧よりも、マットな質感のナチュラルな化粧がなじむ」。パウダータイプ(粉状)のファンデーションでさらりとした肌を作る、アイシャドウは輝きが控えめのものを付けるといった方法で全体の「ツヤ感」を抑えよう。

 浴衣は綿や麻で作られていることが多く、さらりとした風合いになじむ自然な雰囲気のメークが合うようだ。近年は女性だけでなく、男性もメークをする人が増えていると感じる。ナチュラルメークは性別や年代を問わず、より多くの人が楽しめそうだ。

 ほかにも、眉毛の書き方は印象を大きく左右するため意識して整えると良い。中島さんは「眉を細くしすぎるとレトロな(古い)雰囲気になってしまう。最近は、もとの眉毛を生かした太めの眉の形が流行している。角度を付けない平行な形の眉にすると、さらに浴衣とマッチする」とアドバイスした。大人っぽい雰囲気を作りたい場合は少し丸みのある「アーチ型」の眉にすると良い。

 基本的な着こなしに加え、麦わら帽子や耳飾り、帯紐などを合わせてアレンジするのも楽しいという。正装とされる着物に対し、浴衣はカジュアルで着こなしの自由度が高いのが魅力だ。

着物と比べ着用しやすく、小物で着こなしを工夫できるのが浴衣の魅力。

 中島さんは「浴衣は着物と比べて着るのが簡単。家で洗濯できるなど手入れがしやすいという特徴もある。着たいと思った時に着て、和を肌で感じてもらいたい」と話した。「浴衣を着た人々が外を歩くと、町が彩られる。お祭りの時に着るのもいいし、日が沈んでから浴衣で外出し、夕涼みを楽しむのもお薦め」と、気軽に浴衣を楽しむ生活を呼びかけた。浴衣ならではの魅力や着こなし方、選び方を聞き、この夏こそはぜひ浴衣で出掛けてみたいと思った。