島根県津和野町出身で15日に亡くなった大塚康生さんは、世界に誇る日本アニメの創生期を担った「伝説のアニメーター」だった。精緻な描写で生み出す数々の名シーンは多くの観客の心を魅了。現在最前線で活躍するクリエイターにも大きな影響を与えた。

 業界内で「乗り物やメカを描かせたら右に出る者がいない」とまで言われた第一人者。メカや乗り物を詳細に観察し「どうすれば魅力的に映るか」を模索し続けた。テレビアニメ「ルパン三世」の設定資料には、作品で描いた車の内部構造や寸法が詳細に記され、大塚さんのこだわりぶりが伝わる。

 豊富な経験と柔軟な発想力が、スタジオジブリの宮崎駿氏さんの長編監督デビュー作「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)で語り草となるシーンを生んだ。主人公ルパン三世と相棒の次元大介が乗り込んだイタリア・フィアット製の小型車によるカーチェイスの場面。改造して大排気量のエンジンを載せた車が生き物のようにカーブを曲がったり、斜面を駆け上がったりと縦横無尽にスクリーン上を躍動した。

 後進の育成にも力を注いだ大塚さんの意思はアニメ界に脈々と受け継がれている。2020年に出版した画集には大ヒットしたアニメ映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督や「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズのキャラクターデザインを手掛けた貞本義行さんなどがコメントを寄せた。

 訃報を受け、アニメ雑誌「アニメージュ」の編集者時代から大塚さんを知る、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「ぼくを雑誌の世界からアニメーションの現場へ引っ張り込んだのは大塚さんだった。ぼくの人生を決定づけた人でした」とコメントした。

       (白築昂)