仕事中のぎっくり腰など左官職人の多くが悩まされる職業病・腰痛を改善しようと、安来市内の建設業者と健康経営支援を手がけるキャンバス(雲南市)が共同でケアの仕組みづくりに乗り出した。壁塗りなど作業で使う筋肉や負担がかかる体の部分を調べ、同社の作業療法士などが作業に応じた予防・改善メニューを作り効果を検証。ノウハウは「島根モデル」として全国の職人へ発信する。 (白築昂)
左官職人はこてを操る壁塗りをはじめ、10キロ以上のブロックを何度も積み上げる作業で腰に負荷が掛かることが多く、離職の原因につながることもある。安来市今津町のマエダプラスターズ(社員12人)は30~60歳代の職人9人が現場に出ているが、ぎっくり腰などで仕事を休まざるを得ない状況が度々あり、作業療法士や研究者などでつくるキャンバスとともに改善策を探ることにした。
事前にキャンバスのスタッフが現場に入り職人の体の状態などを調べた上で、22日に同社でワークショップを開催。作業療法士の藤井寛幸さん(34)=松江市出身=は「同じ姿勢で重いものを持ち上げたりすることで、筋肉がこわばり痛みが出る」と説明した。
職人からは、モルタルを混ぜるミキサー(60~70キロ)を一人で運ぶ際に腰を痛めた経験談などが挙がり「朝礼時に全員一緒に体をケアする時間をつくる方がいい」「重いものは複数人で持つなど作業ルールの変更と徹底が必要」といった意見が出た。
キャンバスは今後、具体的な改善策を考案し、3カ月程度実践してもらい、効果を検証する。マエダプラスターズの前田剛司社長は「職業病だからといって割り切るのではなく、長く楽しく働いてもらうための方策を導き出したい。それが若い職人のリクルートにもつながる」と話す。
実践・検証で得た効果やデータはキャンバスが契約を結ぶ福島、兵庫、鹿児島3県内の法人にも共有する。認定作業療法士の元廣惇さん(35)は「左官業をはじめ職人の皆さんの抱える職業病は共通する原因も多い。中小企業で働く職人が多い島根から生まれた改善策を全国発信したい」と力を込める。