自ら命を絶つ選択をしてしまう人に思いとどまってもらおうと、山陰両県が自殺予防週間(10~16日)に合わせ、あらためて相談窓口の活用や周囲の人のちょっとした声かけの重要性を呼びかける。両県の自殺者数は近年下げ止まっており、年配者や高齢者など年齢層が高いほど増えている。啓発や支援員養成に力を入れ、援助の手が身近にあることを知ってもらう。 (勝部浩文)

 厚生労働省によると、2021年の自殺者数は島根が前年比11人減の112人、鳥取が同10人増の88人となっている。両県とも00年前後をピークにおおむね半減したが、近年は島根が100人強、鳥取が80人前後で推移し、交通事故の死者数(21年は島根10人、鳥取19人)と比べれば多い。人口10万人当たりの自殺死亡率も全国平均16・4人に対し、島根が16・6人と高い状況が続く。鳥取は15・8人で下回った。

 年代の割合は中年以降が多く、島根は40、50代が全体の3割、60、70代と80歳以上で4割を占めた。鳥取は40、50代で4割に達した。動機はうつ病や身体の病気といった健康問題が最も多く、経済・生活問題や家庭問題が次ぐ。ただ、不詳も半数近くあった。

 自殺に至る経緯は多様で対策に特効薬はない。ただ思い詰めた土壇場で、相談窓口への連絡や同僚からの何げない声かけで気が和らぎ、思いとどまるケースは少なくない。

 相談機関は既存でも幅広く備わり、各保健所や市町村の医療・福祉窓口のほか、各地の社会福祉協議会や労働局、弁護士会、警察の相談センター、いのちの電話などがある。島根県は各保健所を通じ、職場などで相談対応や声かけに当たる「ゲートキーパー」養成の研修会も進めている。

 島根県障がい福祉課の木村淳子・自立支援医療グループリーダーは「悩んだときは気軽に相談機関を頼ってほしい。周囲の人もちょっとした変化に気付いてあげることで結果が変わる」と強調した。

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 山陰両県には、人生に悩む人の相談を受ける「いのちの電話」がある。

<島根いのちの電話> 0852(26)7575=平日午前9時~午後10時、土曜午前9時~日曜午後10時。

<鳥取いのちの電話> 0857(21)4343=毎日正午~午後9時。