ただ、生きる。ただ、そこにいる。そのありようを受けとめることの、不可解なまでの難しさ。くしくも新人の作品に同根のテーマの小説が集まった点に、時代性を感じずにはいられない。

▼「健常」の外

 前作「私の盲端」で人工肛門になった女子大学生を描き、鮮烈な印象を残した朝比奈秋。現役医師の作家ならではの観察眼に裏打ちされた身体性のリアリティーと、「健常」という言葉...