島根県立美術館(松江市袖師町)の再開館記念企画展「祈りの仏像 出雲の地より」(県立美術館、山陰中央新報社など主催)が開催中だ。飛鳥時代から鎌倉時代に制作された43点の個性豊かな仏像が並ぶ。9月23日にあった日本仏像研究の第一人者山本勉・鎌倉国宝館長による記念講演を基に、仏像ファンの記者がお気に入りの仏像「推し仏」を第1章から第4章の各章ごとに紹介する。 (報道部・井上雅子)

 企画展のポスターに登場した恐ろしさと美しさを兼ね備えた千手観音を見て、実物をぜひ見てみたいと思った。取材で企画展を担当し、千手観音は本当に美しかった。取材を繰り返すうちに仏像の魅力を知って、今は県外の仏像を見に行こうと計画中。企画展「祈りの仏像 出雲の地より」の「推し仏」はいずれも美しく、迫力がある。

 ▽仏教伝来の頃の菩薩像

 第1章「出雲国風土記と古代寺院」では仏教が日本に伝わった時期の作品が並ぶ。朝鮮半島から日本に仏教が伝わったのは6世紀半ばで、地方には7世紀後半に広まる。

 ちょうどその頃の692年に作られた重要文化財・観音菩薩(ぼさつ)像(鰐淵(がくえん)寺、出雲市)がお出迎えしてくれる。「豪族が父母のために作った」という意味の刻銘が台座に記されている。高さ1メートルの金剛仏で、細身で子どものような無邪気な表情をしていてかわいらしい。菩薩は、悟りを求めて修行している釈迦(しゃか)の姿を表している。
 

あどけない表情を見せる観音菩薩立像(鰐淵寺、出雲市)

 ▽迫力の四天王立像

 第2章「国家の安寧と地域の寺院」では平安前期の作品が集まる。

 重要文化財・十一面観音菩薩像(清水寺、安来市)は「変化(へんげ)観音」と呼ばれる人気のキャラクターの一つで、ほかには千手観音や...