日本に仏教が公に伝えられた後の7~8世紀の飛鳥・奈良時代から、現在のNHK大河ドラマで描かれる13~14世紀の鎌倉時代にかけての出雲地方の仏像を一堂に展示した企画展『祈りの仏像 出雲の地より』が、島根県立美術館(松江市袖師町)で開幕した▼寺院で正面から見上げるような感じで観覧するのとは違い、左右や後ろからじっくり眺めて情報を読み取り、作者や制作を依頼した人の思いを想像する楽しみがある、と会場で教わった▼表情にあどけなさがある伝来初期の仏像、国家の安寧を思って作ったからか、険しさや思慮深さが見てとれる平安時代の薬師如来や十一面観音菩薩像。平安後期の仏像群は、荘園を介して中央(京都)との関係が濃かったことを反映し、彫刻による表現が洗練されている▼調査した椋木賢治学芸課長は「それぞれの時代の中央とのつながりが表れており、出雲が開かれた地域だったことが分かる」と解説する。仏像の配置も面白い。萬福寺(大寺薬師、出雲市東林木町)の四天王立像は別の方を向いて、四方の難敵に立ち向かう戦隊ヒーローのよう。半円形の舞台に横並びになった阿弥陀如来や不動明王など7体の坐像(ざぞう)は、さながらサミット後の共同会見といった趣で、今にも言葉を発しそうだ▼企画展は10月24日まで。貴重な仏像を提供した寺院も訪ねつつ、出雲に神在月が来る前に「仏在月」も堪能したい。(万)