中国の詩人・杜甫は、秋の花を意味する秋華という言葉を、晩年に詠んだ「秦州雑詩」の中で用いた。そこから名を取った競馬の3歳牝馬三冠の最終戦、第30回秋華賞(G1)がきょう、京都競馬場である。
字のごとく華やかなレースに出走できる馬は一握り。競走馬は年間約8千頭が生産されるが、日本中央競馬会(JRA)で活躍できるのは約3千頭。3歳秋までに一回も1位になれなかった馬は原則、引退を余儀なくされ、地方競馬への移籍や乗馬クラブといった“再就職先”が見つからない馬は、主に食肉用として処分される。
「早く走れないだけで処分していいのか」。現役時代から引退競走馬の余生を気にかけていたJRA元調教師の角居勝彦さん(61)は、2年前の夏、石川県珠洲市に引退馬のための牧場「珠洲ホースパーク」を開いた。
目指す姿は、馬に新しい仕事をつくる「ハローワーク」。耕作放棄地の除草、人の感情に同調できる馬の特性を利用した人材育成研修、ホースセラピー…。土地を生かし、人を呼び込み、馬のみならず人の雇用も生む。奥能登にルーツがある角居さんが、馬の力を借りて行う古里の再生事業でもある。
先日、能登半島地震の被災地視察で珠洲市を訪れた際に、牧場に立ち寄った。6頭のサラブレッドと1頭のポニーが1ヘクタールの牧場で草を食(は)んでいた。角居さんにすっと寄り、甘える元競走馬たちは、幸せそうだった。(衣)













