どんな古い家電も直す「凄腕(すごうで)修理人」として知られる今井和美さん(三重県在住)の店には、メーカーにも修理を断られた機械が、最後の望みを頼って次々と持ち込まれる。
まずばらばらに分解して故障箇所を突き止め、交換パーツが製造中止になっていれば自分で作ってしまう。チャンネルを回すブラウン管テレビを、デジタル放送が映るよう改造するなどお手の物だ。
今井さんは初めて見る機械が来ると「これはどんな仕組みかな」と目を輝かせる。修理を終え依頼主に戻す時、幸せそうな表情を浮かべる。壊れたものが直っていくのには新品を買うのにはない感動がある。
政治の世界で壊れたものを直すのは難しい。自民党は政権のバランス役だった公明党との連立を解消し、日本維新の会との枠組みを選択した。「政治とカネ」の問題などで政党間の信頼が壊れていたのだが、凄腕修理人がいなかった。とはいえ政治には新陳代謝が必要。変化は悪いことばかりではない。
その一つに積み残しの政治課題が動き出す期待があるが、今回の政変が米国型「二大政党制」を模索した日本が、欧州型「連立政権制」に移行する第一歩だとしたら心の準備が必要だ。連立は多様な民意が反映できる半面、政策決定のスピードが遅くなる欠点を持つ。きょうは新首相が誕生する日。祝賀気分もほどほどにして、一刻も早く政権始動のスイッチを入れてもらいたい。(裕)













