女性初の自民党総裁に選出され、陣営の報告集会であいさつする高市早苗氏(中央)=4日、東京・平河町
女性初の自民党総裁に選出され、陣営の報告集会であいさつする高市早苗氏(中央)=4日、東京・平河町

 大型スクリーンに映る文字に場違いな印象を抱いた。「爆誕初の女性総理へ」。今月4日、石破茂首相に代わる自民党の新総裁に選ばれた高市早苗氏が、陣営の報告集会であいさつする後方に映し出されていた。

 爆誕? 手元の広辞苑には載っていない。調べると、「爆発」と「誕生」を組み合わせた俗語で、世間を騒がせるような衝撃を伴い生まれるという意味。1980年代に漫画のせりふとして登場していたそうだ。

 本命視された小泉進次郎氏を破っての勝利とはいえ、1年前の総裁選でも決選投票に残っており、有力候補の一人だった。爆誕は言い過ぎだろうと思っていたが、高市総裁の誕生後、文字通り政界に「爆発」級の衝撃が広がった。

 事の始まりは“熟年離婚”と揶揄(やゆ)される公明党の連立政権からの離脱。政権奪取の好機とばかりに立憲民主党が日本維新の会、国民民主党と首相指名選挙での候補一本化を目指したものの、政策面で折り合わず“破談”に。一方で自民が維新の取り込みを狙い“求婚”する思わぬ展開になった。混迷する政局は見るだけなら面白いが、物価高にあえぐ国民を置き去りにしていないか。

 総裁選から半月余りを経て、やっと召集された臨時国会で高市氏が首相に指名され、新内閣が発足した。爆誕か否かはさておき、世間を騒がせるだけでなく、安心させる政策を打ち出してくれないと、政権はまた短命に終わる。(健)