パンク、グラム、グランジ、プログレッシブ―。ロックにはいろいろジャンルがあるが、パブ・ロックってのをご存じだろうか。文字通り、英国で酒を出す「パブ」で主に演奏するバンドたちの音楽を総称。肥大化し、産業化したロックに対抗する形で1970年代半ばに登場した。
前述の一連のロックのようにファッション性やメッセージ性などを備えた一大ムーブメントにはならなかったが、ブルースやR&Bなどルーツミュージックを下敷きにしたシンプルなロックを小さなホールで演奏するスタイルは、一部の音楽マニアから熱狂的な支持を得た。
そんなパブ・ロック勢の雄がドクター・フィールグッドだ。75年のファーストアルバム「ダウン・バイ・ザ・ジェティ」(モノラル録音)をぜひ聴いてほしい。ウィルコ・ジョンソンの鋭いギターリフにリー・ブリローの骨太なボーカルが乗る「シー・ダズ・イット・ライト」、ジョン・リー・フッカーのブルースナンバー「ブーン・ブーン」のカバーなどを収録。疾走感あふれる1枚だ。
全英ナンバーワンを記録した76年秋発表のライブ盤「ステューピディティ(殺人病棟)」やブルースフィーリングあふれる77年夏発表の「スネーキン・サスピション」など、他にもヒットしたアルバムがある。
また、ザ・フーの「キッズ・アー・オールライト」のカバーを含むアルバム「ティーンエイジ・ディプレッション」でデビューしたエディ&ザ・ホットロッズ、79年に「ファースト・オフェンス」を発表したインメイツなどが人気を集めた。
パブ・ロックはセックス・ピストルズやクラッシュなどUKパンクの導火線となったともいわれる。
ジョー・ストラマーはクラッシュ結成前、パブ・ロックバンド「The 101,ers」で活動。同じくパブ・ロックバンド「ロックパイル」をデイブ・エドモンズと共に結成し、名盤「セカンズ・オブ・プレジャー」を発表したニック・ロウがUK5大パンクバンドの一つ、ダムドのファーストアルバム「ダムド・ダムド・ダムド」をプロデュースするなど密接な結びつきがある。
パンクに劣らず、ビートの効いたパブ・ロック。聴くと思わず体が動いてしまう。
(川)
<投稿募集中!>
海外のロック、ポップスについて読者の投稿も歓迎します。オールディーズから最新ヒットまで、大好きな歌やアーティストのこと、思い出のエピソードなどを自由にどうぞ。
>> 投稿はこちらから













