月1回子ども食堂を開く「らーめん工房 海」=出雲市多伎町多岐
月1回子ども食堂を開く「らーめん工房 海」=出雲市多伎町多岐

 道の駅「キララ多伎」(出雲市多伎町多岐)近くのラーメン店「らーめん工房 海」は新店主が新型コロナウイルス禍で開業した。新たなサービスに挑戦し、苦境を乗り越えたほか、子ども食堂を月1回開き、親子連れの声でにぎわう。「地域との共存共栄」を掲げて子ども食堂を始めて1年。地域住民が定期的に集う場として定着しつつある。

 店を営むのはオーナーの鳥谷修さん(55)。30年間の会社員生活に終止符を打ち2019年秋、店を運営していた以前の事業者から引き継いだ。ラーメンやギョーザなどの味、ラインアップは変えたものの、店名や外観、内装はそのままで開業した。

 20年3月のオープンと同時に国内でも新型コロナの感染が拡大。客足はなかなか増えず、前年と比べて売り上げが半減した月もあった。「とりあえず何でもやろう」。鳥谷さんは都会地の例にならい、テイクアウトや配達、冷凍ギョーザの販売に即座に対応した。

 多伎町内で外食できるのはわずか数店舗。その一つでもある「海」を応援しようと訪れ、声を掛けてくれる地元住民の姿は励みになったといい、恩返しの形として思いついたのが子ども食堂だった。
100食限定で開く食堂は社会福祉協議会などの協力も得て口コミで広まり、訪れる人が増えるだけでなく、野菜や果物といった食材や寄付金も地域から寄せられるようになった。

 全国で広がる子ども食堂に個人の飲食店が取り組むケースは多くはないが、店舗や人員の確保、食材の活用といった点は強みになるという。鳥谷さんは「お金に変えられない喜びが従業員のモチベーションになる。長期的な視点では将来のファンの獲得につなげたい」と、地域に寄り添った店舗作りに意欲を燃やす。