氏名や本籍地、住所などが判明せず、遺体の引き取り手もない死者を指す「行旅死亡人」。さまざまな事情で流浪の末に行き倒れて亡くなる人たちは昔から存在するが、時代とともに様相は変化している。多額の現金を残して亡くなった高齢女性は、生前の生活状況や人的交流がほとんど見えなかった。人とのつながりがいっそう希薄になり、〝無縁社会〟と隣り合わせに生きる私たち。社会の映し鏡とも言える存在を追跡して考えた。
アパートでの孤独死。多額の現金を残して―。「行旅死亡人」として官報に掲載された謎めいた高齢女性は一体誰なのか。どんな人生を歩んだのか。私たちはわずかな情報を手掛かりに半年かけて女性の身元を突き止め、生前の姿に迫った。
2020年4月、兵...