岸田文雄首相の施政方針演説全文は次の通り。

一 はじめに

 第211回国会の開会にあたり、国政に臨む所信の一端を申し述べます。

 先日の欧州・北米訪問の際、ある首脳から、「なぜ日本では、議会のことを、英語でparliamentではなく、Dietと呼ぶのか」と問われました。確かに、ほとんどの国は、議会を英語でparliamentと呼ぶようです。調べてみたところ、Dietの語源は、「集まる日」という意味を持つラテン語でした。

 国民の負託を受けたわれわれ議員が、まさに、本日、この議場に集まり、国会での議論がスタートいたします。

 政治とは、慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断し、その決断について、国会の場に集まった国民の代表が議論をし、最終的に実行に移す、そうした営みです。

 私は、多くの皆さまのご協力の下、さまざまな議論を通じて、慎重の上にも慎重を期して検討し、それに基づいて決断した政府の方針や、決断を形にした予算案・法律案について、この国会の場において、国民の前で正々堂々議論をし、実行に移してまいります。

 「検討」も「決断」も、そして「議論」も、全て重要であり必要です。それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進めてまいります。

二 歴史の転換点

 近代日本にとって、大きな時代の転換点は2回ありました。

 明治維新と、その77年後の大戦の終戦です。そして、くしくもそれから77年がたった今、われわれは再び歴史の分岐点に立っています。

 ロシアによるウクライナ侵略。世界が堅持してきた「法の支配による国際平和秩序」への挑戦に対し、国連安全保障理事会は機能不全を露呈しました。さらに、この機に乗じて、ロシアとの連携を強める国、エネルギーなどで実利を追う国、核ミサイル開発を進める主体など、国際平和秩序の弱体化があらわになっています。

 そして、もはや待ったなしとなっているのが、深刻さを増す気候変動問題、感染症対策などの地球規模の課題、世界中で生じている格差問題など、広い意味での持...