全国初の集落営農型農事組合法人「おくがの村」を立ち上げた津和野町中山の糸賀盛人代表理事(74)が、書籍「だから集落営農が必要だ」を出版した。2022年が法人設立から35年の節目に当たったのを機に、各地の法人にも自信を持って続けてほしいと思い立った。集落営農の幅広い役割と重要性を説く。 (藤本ちあき)
21年2~5月、全国農業新聞の連載企画「農人伝」で全12回にわたり掲載された記事を基に構成。農業ジャーナリストの榊田みどりさん(62)=埼玉県在住=が糸賀さんに取材し執筆した。
おくがの村は1987年に設立。それまで営農規模の拡大を推進してきた糸賀さんだったが、農地を購入した後に前の所有者が地元を離れた経験から「農地の持ち主が流動化すればするほど人口減になる」と気付いた。
地域を守りながらの安定的な農業の継続を目指し、集落単位で共同化を開始。書籍ではそんな法人設立の経緯や、法人には社会貢献の役割もあり、人口減が進む中山間地域でこそ必要だという考えを、糸賀さん独特の語り口で紹介する。
糸賀さんは全国各地で集落営農を続ける人々に向けて「自分たちがやってきたことに対する自信と誇りを再確認してくれたらうれしい」と語る。
取材・執筆者の榊田さんは、産業政策の一面だけで農業の維持を図るのは難しいとし「地域をどう存続させるのか参考点が多いのではないだろうか」と話した。
四六判、144ページ。1320円。書店やインターネットで販売している。