2月6日、中東・トルコ南東部とシリア北部にまたがる広い範囲で大地震が発生した。20日には再び強い地震が発生し、3月1日時点、死者は5万人を超えたと報じられ、救助活動や被災者の避難生活が続いている。被災者への支援はどうしたらいいのか、寄付先の例を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)
▽現地のニーズに合わせた支援を
「困っているから何か送らなきゃ」と思いは募るが、大きな災害では被災した現地で求められている物資を的確に届けることが何よりも重要になる。日本赤十字社島根県支部(松江市内中原町)総務課の芦野朱梨主事は「現地が求めているものが(支援をする側が必要と想像する物資と)一致するとは限らない。被災地が海外となるとさらに、ニーズを把握するのは難しい」と話した。
日本赤十字社は現地のニーズに合わせた支援をするため、支援物資の持ち込みを断り、救援金や義援金といった金銭的援助のみを受け付けている。
集まった救援金は日本赤十字社から国際赤十字社を経由し、テントや毛布、食事といった物資の提供や救援活動の資金に充てられる。
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日本赤十字社の「2023年トルコ・シリア地震救援金」は銀行振り込み、支部への現金持ち込みで5月31日まで受け付ける。

シリアでは政府軍と反体制派による内戦が12年にわたり続いている。トルコと比べ、寄付による支援がきちんと行き届くのか不安に思う人もいるだろう。芦野主事によると、日本赤十字社は地震発生前からシリア赤新月社が行っている「巡回医療」を支援し、負傷者や体調不良者の治療をサポートしている。救援金は物資などのほか、巡回医療の支援にも充てられる。地震発生後は巡回医療チーム9班がシリア国内の被災地へ入り、2月18日時点、約2万3286人を診察したという。
また、日本赤十字社は地震以前から、シリアなど中東の紛争により危機にある人たちを支援するために「中東人道危機救援金」を受け付けている。詳細はこちらから。
▽寄付先の例
自然災害への緊急支援を行い、寄付を呼びかけている団体は多くある。いざ寄付しようと思っても、どこを選べばいいのか分からず困る人も多いだろう。寄付先を選ぶ際、参考にしやすいのは各団体のホームページ。日頃の活動内容や活動場所が明確にされているか、活動実績はこまめに公開されているかなど、きちんと確認することで、信頼できる寄付先を選びやすくなる。寄付先の例は以下の通り。

① unicef(ユニセフ:国連児童基金)
1946年に設立され、子どもの命や健康を守るため、約190の国と地域で保健、栄養、衛生環境、教育の改善、災害などによる緊急支援を行っている。
今回の震災では現地チームが必要とされるサポートを調査し、被災した子どもたちや家族への飲み水、衛生用品、防寒着といった物資を提供している。人生で初めての大地震を経験した子どもたちも多いといい、カウンセリングといった心理的サポートも行っている。紛争が続くシリアでは給水やトイレの整備、感染症対策といった衛生面での支援を行っている。
寄付はクレジットカードや銀行振り込みなどオンライン決済のほか、郵便局からの振り込みも受け付けている。詳細はこちらから。

② UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
1950年に設立された国連の難民支援機関。紛争や迫害といった人的災害による難民を保護し、支援している。通常は自然災害の被災者への支援は行っていないが、被害の規模が甚大な場合などは緊急支援を行っている。
今回の震災でも緊急支援に取り組み、現地チームのニーズ調査をもとに調理済みの食料、テント、毛布、衛生キット、防寒着といった物資支援や、集合シェルターに避難している人々への心理的サポートを行っている。
寄付はクレジットカードや銀行振り込み、コンビニ決済などで受け付けている。詳細はこちらから。
③ WFP(国連世界食糧計画)
123の国と地域で紛争や自然災害、貧困によって苦しむ人々に食料を提供している。国連WFPは地震発生前から、紛争が続くシリアで毎月550万人に食糧支援を行っている。地震発生後3日間、中断していた食料支援を再開したほか、トルコでも炊き出しのための食料を配給している。
寄付はクレジットカードやコンビニ決済などで受け付ける。詳細はこちらから。

④ 国境なき医師団
1971年に設立され、約70の国と地域で紛争、自然災害、貧困などにより危機的状況にある人を治療、支援している。
シリアでは12年前の紛争開始直後から負傷者らの支援を開始し、病院や保健センターを運営している。地震発生後も負傷者の治療を継続し、ニーズ調査に基づきテント、防寒具、食料といった物資の提供、避難所での支援も行っている。
寄付はクレジットカード、銀行振り込み、電話(0120-999-199)などで受け付ける。詳細はこちらから。
⑤ ワールド・ビジョン・ジャパン
1950年に設立された国際NGO(非政府組織)で、約100カ国で災害支援、人道支援、開発援助を行っている。1987年に日本支部を設立、2002年に認定NPO(非営利組織)法人となった。
12年にわたり紛争が続くシリアで地震発生以前から、衛生環境改善などの支援をしている。基盤を生かし、今回の地震発生直後から現地スタッフが緊急支援活動を始めた。スタッフが現地で求められている物資、支援を調査し、暖房器具や食料、毛布、衛生用品などを提供している。保護者を失った子どもたちの保護活動も行っている。
寄付はオンラインでの決済を推奨している。ホームページや電話で払込用紙を入手し、コンビニや郵便局からの支払いもできる。詳しくはこちらから。

⑥ ピースウインズ
1996年2月、日本で誕生した国際NGO。36の国と地域で災害、紛争、貧困による人道危機への支援を行っている。今回の震災では現地の提携団体による医療支援を行い、日本の国際緊急援助隊がトルコ・ガジアンテプに野営病院を設置するまで仮設診療所の設置、運営を行った。調査でニーズを把握し水や食料、ペットフード、衛生用品といった物資も提供している。
寄付はクレジットカード決済や銀行振り込み、郵便振替などで受け付ける。詳しくはこちらから。

▽山陰両県でも支援の動き
地震発生から間もなく1カ月。山陰両県でも支援の動きが広まっている。
松江市は2月17日、市役所本庁舎ロビーなど市内の計9カ所に募金箱を設置し、トルコ・シリア地震への支援を呼びかけている。集まった救援金は日本赤十字社に送り、支援活動などに使ってもらう。
松江市の募金箱設置は3月31日まで。募金は平日の午前8時半から午後5時15分まで受け付ける。設置場所は以下の9カ所。
市役所本庁ロビー▽鹿島支所▽島根支所▽美保関支所▽八雲支所▽玉湯支所▽宍道支所▽八束支所▽東出雲支所

鳥取県は2月9日、県庁総合受付など県内8カ所に募金箱を設置した。松江市と同じように、集まった救援金は日本赤十字社を経由して支援活動に充てられる。
募金箱の設置は5月31日まで。受付時間は平日の午前8時半~午後5時15分。(図書館や博物館などに設置している募金箱は、施設の開館日、時間に合わせる)。設置場所は以下の8カ所。
県庁総合受付(鳥取市東町1丁目)▽東部庁舎(鳥取市立川町)▽八頭庁舎(鳥取県八頭町郡家)▽中部総合事務所県民福祉局(倉吉市東巌城町)▽西部総合事務所県民福祉局(米子市糀町1丁目)▽日野振興センター日野振興局(鳥取県日野町根雨)▽県立図書館(鳥取市尚徳町1丁目)▽県立博物館(鳥取市東町2丁目)

自然災害や紛争、貧困により困難な状況にある人を支援するにはさまざまな窓口がある。選択肢が多く悩む人も多いが焦らず、各団体のホームページなどを参照して活動や使途を理解し、納得できる寄付先を選びたい。