山陰両県の知事選が23日に告示された。舌戦を繰り広げる候補者らは、どんな人柄で、どんな人生を歩んできたのか。まずは島根県知事選に立候補した3人の素顔に迫った。(届け出順)
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■向瀬 慎一氏(共産新)
 機械好き 技術者資格も

 これまで何度も知事選や国政選挙に挑み続けてきた。1989年に入学した大学の学生自治会などで、消費税導入や学費引き上げに対して反対の声を上げたのが、政治の道を志す原点で「生活を守るためには運動が必要」と感じたという。

 故郷で電器店を経営する父の影響で、昔から機械いじりが好きだった。「電気主任技術者」などの資格を取得し、帰省時は父の仕事を手伝う。

 島根県で好きなのは「山と海が近いところ」で、冬場はスキーを楽しむ。移動手段はもっぱら排気量250ccのバイクを使う。走行中に道路の危険箇所を見つけることも多く、インフラ整備の重要性を知事選でも訴える。生活に身近な視点からどんな政策が必要か、考えを巡らせる。

 党の地方議員の選挙に合わせて取った1500通のアンケートを読み解くと、県民の多くが疲弊が進む地域にこのまま住み続けることができるのか、不安に感じていることが分かった。「政治には、命、暮らし、未来がかかっている」と気を引き締める。

 浜田市金城町下来原、52歳。

 (片山皓平)

 

■丸山 達也氏(無所属現(推)自民、立民、公明、国民)
 心ほぐす家族との時間

 県政初の県外出身知事となってはや4年。公務で石見や隠岐、県外へも頻繁に行き来し、多忙を極める中で、心身の緊張を解き放つのは家族との時間だ。

 今春、長女が松江市内の高校を卒業して県外へ。子ども3人全員が親元を離れ「家族一緒にいられる期間はそんなに長くない」と寂しさがある。一方で幸せな知らせが舞い込んだ。2019年知事選で街頭演説にも立った長男が昨年、社会人となり結婚。「月日がたつのは早い」と頬が緩む。

 しばしば政府にも苦言を呈す「物言う知事」に助言するのは妻・祐子さん(52)。「記者会見の態度が悪い」「もっと前向きにものを言ったら?」。辛辣(しんらつ)な指摘も家族だからこそ。「職員は言えないだろうからといって家の中で強めに怒られる」と照れ笑いを浮かべる。

 放課後児童クラブの拡充やコロナ対策など必要とみた政策に対して、全力を投入してきたと自負する。手腕は生まれ育った農家にも通ずる。「手を抜いたところは必ず後で影響が出る」。山積する課題に対し、優先順位を定めこつこつと対応するのが信条だ。

 松江市内中原町、53歳。

 (白築昂)

 

■森谷公昭氏(諸派新)
 「現状変えたい」原動力

 1995年の浜田市議選を皮切りに、浜田、江津両市長選、島根県議選を含めて過去に挑んだ選挙は11回。「現状を変えたい。何とかしなければ」という強い思いからの行動で「政治家を志している意識はない」と言う。

 東京で税理士事務所を開業し、軌道に乗ってきたところで父に呼び戻された。帰ってきた古里は東京と違い「カルチャーショックを受けた」。顧客の相続や節税対策の手続きに通った新宿区役所に慣れていた分、浜田市役所の対応を「ずさん」と感じた。「何でこんなに怠慢なんだ」との怒りが原点という。

 動画サイト・ユーチューブの配信に早くから取り組むなど「新しいものに乗り遅れたくない」と好奇心旺盛。一方で「空気が読めず、人に合わせるのは苦手」と自己分析する。縫いぐるみを持ち歩き、過去の選挙では大きなミッキーマウスを自ら運転する選挙カーの助手席に乗せたことも。知事選でそばに置くのは、ブータン使節団から購入したヒョウの縫いぐるみ。「お守りではなく、同志」。組織は持たないが、一人ではない。

 浜田市日脚町。67歳。

 (吉田雅史)