新潟産業大准教授・蓮池薫氏
新潟産業大准教授・蓮池薫氏

拉致問題の真相と解決への道
日本 交渉でもっと圧力を

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が27、28日、米子、松江各市であった。北朝鮮による拉致被害者で、新潟産業大准教授の蓮池薫氏(65)が「拉致問題の真相と解決への道」と題して講演。全ての被害者の帰国に向けた交渉に、日本政府が強い姿勢で臨む必要性を訴えた。要旨を紹介する。

 北朝鮮が日本人を拉致した目的は日本を経由して韓国で自由に情報収集するための身分的合法性を確保する必要があったためだ。日本人を連れ去り、その人になりかわって活動した。拉致は外国人スパイ養成の目的もあった。北朝鮮国民は外国滞在や語学力に乏しかったため、外国人を連れてきて教育し、世界各地に派遣する狙いがあった。

 私は1978年7月、交際中だった妻と、夕涼みのため訪れた新潟県柏崎市の海岸で工作員に拉致された。10日後、首都・平壌(ピョンヤン)のスパイ養成施設「招待所」に入れられ、思想教育を受けさせられた。工作員への日本語教育や、書籍の翻訳をさせられた後、2002年10月に私を含め5人が帰国したが、残念ながらそれ以降は進展がない。

 問題を解決するには日本が独自に北朝鮮と交渉しなければならない。具体的には国連の安保理制裁に抵触しない食料、人道支援をすること、非核化交渉の進展に応じて支援策を打ち出すことだ。

 ただ、相手が時間稼ぎをする可能性がある。日本で帰国を待つ家族のため、期限を設定してプレッシャーをかけることが重要だ。実現できなければ国内世論が許さないという姿勢を示すのだ。北朝鮮は長期的な交渉スケジュールで日本の経済支援を考えているはずだ。解決できなければ経済支援も危ういという圧力をかけないといけない。

 北朝鮮が拉致を認めていない、米子市出身で政府認定拉致被害者の松本京子さん=失踪当時(29)=については、交渉で京子さんの名前を前面に出し、返してもらわないと解決にならないと訴える。国内メディアがもっと問題を取り上げ、世論を喚起することが必要ではないか。

(柴田広大)