3月末に発売された米国の女性トリオ、ボーイジーニアスの初アルバム「ザ・レコード」が世界で大ヒットしている。才能豊かなシンガー・ソングライター3人の個性が融合した、大ヒットも納得の素晴らしい作品。この3週間毎日のように耳を傾け、最後の12曲目が終わるのが毎回名残惜しい。

それぞれソロとしてインディー・シーンで既に人気を得ているジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダッカスの3人が組んだ。バンドサウンドのロックあり、ギター弾き語りのフォークあり、アカペラのバラードありと多彩で、どの曲もメロディアス。特に、3人のボーカルが入れ替わりつつ、さびで美しいハーモニーを響かせる「ノット・ストロング・イナフ」はキャッチーで切ないメロディーがたまらない。
収録曲はジョニ・ミッチェルやサイモン&ガーファンクル、ザ・バーズ、シェリル・クロウなどを想起させ、フォーク・ロックの歴史をたどるかのよう。過去のアーティストが生み出してきた音楽を土台に、独自性のある作品を創り出した。
ちなみに「天才少年」を意味するグループ名は、男性アーティストは生まれつき「天才少年」であるとの偏った考えを持つ男性協力者との関わりの中で、ジョークとして生まれたという。


結成は2018年。その年に6曲入りEP「ボーイジーニアス」をリリースしている。そのことはこのたび知ったので早速購入して聴いてみたが、こちらも優れた作品だ。ジャケットも面白い。真ん中のジュリアン・ベイカーがギターを抱え、両側の2人は何も持たず座る構図は、スーパーグループと呼ばれた、あのクロスビー・スティルス&ナッシュの最初のアルバム「クロスビー・スティルス&ナッシュ」(1969年)のジャケットをまねたものという。確かにスーパーグループの誕生といえるかもしれない。

3人のうち、ジュリアン・ベイカーだけは聴いたことがあった。コロナ禍前の2017年、東京出張した折に渋谷のタワーレコードで1、2曲試聴して即購入したのがその年に出たソロ2作目「ターン・アウト・ザ・ライツ」だった。試聴コーナーには「今インディーズ注目のアーティスト」といったポップが躍っていたのを覚えている。奥深い世界に魅了されたが、その後は動向を知る機会もなかった。
彼女ら3人のソロ作品も聴いてみたくなるボーイジーニアスの「ザ・レコード」である。音楽を聴き始めてもう40年以上になるが、こういう出合いがあるからこそ、いつまでも、ほそぼそとでも新しい音楽に触れていたいと思う。(洋)
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