安来市安来町、和鋼博物館の開館30周年記念企画展「そこにも!ハガネ技術展」が29日、始まった。安来の発展とたたら製鉄や特殊鋼生産の関わり、プロテリアル(旧日立金属)安来工場の歴史を写真パネル60点で振り返り、常設展示資料に加えて安来工場の最新の製品5点が並ぶ。5月14日まで。会期中は入館無料。
安来は江戸時代から明治期にかけて周辺の山間部のたたら製鉄で生産された鉄を北陸や関西に運ぶ積み出し港として栄えた。洋鉄に押され、たたら製鉄が廃れると、たたら事業者らが1899年に「雲伯鉄鋼合資会社」を設立。近代的な製法で特殊鋼を手がけ、安来工場のルーツとなった。
写真で目を引くのは、1945年に開館した安来工場直営の映画館「快楽座」(後に日立会ホールとなり2005年に解体)、同じく45年開設の「日立安来病院」(現在のやすぎ博愛クリニック)、46年開館の安来工場付属「和鋼記念館」(1993年開館の和鋼博物館の前身)。安来工場が市民生活と深く関わってきたことがうかがえる。買い物客でごった返す54年ごろの「明治町商店街」も興味深い。
展示する製品は液晶テレビ製造に使う薄い膜の素材「FDP用スパッタリング」や自動車の変速機用CVTベルトなど。和鋼博物館の荒川優司館長は「鋼は安来と縁が深く、製品がさまざまなところに使われていることを知ってほしい」と来館を呼びかけた。
午前9時~午後5時。10日は休館。(桝井映志)