鳥取県南部町の住民有志が学校給食をアレンジしたレシピ集を作った。新型コロナウイルス禍で帰省できず、外食もままならない町外在住で町出身の若者を応援しようと発案した。受け取った若者は「懐かしい」と喜んで調理し「仲間と一緒に食べた味」と古里の温かさをかみしめている。 (田淵浩平)
冊子はA5判フルカラー18ページ。「キムタクごはん」「スタミナ納豆」など掲載12品目は、町民300人へのアンケートを基に厳選した。給食はおいしさと栄養バランスを両立した手の込んだ料理だが、自炊に不慣れでも10分間以内の調理で再現できるよう、レシピを工夫した。
例えば「きなこ揚げパン風」は、揚げる代わりにサラダ油を表面に塗ってトースターで焼くことで約3分で完成する。材料のコッペパンは、どれを選べばいいか分からない人を想定し、スーパーで手に入る大手メーカーの商品を例示した。
2020年秋に青年団メンバーや食生活改善推進員らで実行委員会を設け、給食の献立を考える栄養士に助言を仰いだ。町は制作費約100万円を補助した。
制作メンバーの思いや古里の話題を添えて2月に5千部を作成。これまでに出身の学生ら121人に地元産品とともに届け、町内全3500戸にも配った。同町法勝寺の複合施設「キナルなんぶ」で残部を配るほか、町観光協会のインターネットサイトに載せた。
冊子を受け取った広島市のパート従業員、米原夕可さん(20)は、同居人に「納豆サラダ」を振る舞ったといい、「出身地は違うが給食の話で盛り上がった」と喜ぶ。岡山県津山市の大学生、山地はるひさん(19)は「弁当に詰めて、懐かしさを感じながら学校で食べている」と話す。
町内でも話題となり、「息子から久々に連絡があった」「中高年向けの給食もまとめてほしい」といった声が寄せられた。
制作に携わった町教育委員会主事の中前元希さん(31)は「町外で暮らす出身者へのエールを込めた。南部の給食が地域を越えて各家庭の味になればいい」と願った。
掲載サイトはこちら http://tottorinanbu-kanko.jp/recipe/