悲恋の物語が伝わる松江市東出雲町下意東の美人塚周辺で、ショウブの花が見頃を迎えている。2年前に周辺を再整備して株を植え、ようやく咲きそろった。9日は地元の住民や中学生が草刈りを行ってきれいにし、古くから伝わる伝説と美しいショウブの花に思いを込めた。
美人塚は、意東地区で語り継がれる美人妻ゆかりの地。室町時代、上意東の大江(だいご)の地にいた女房が美しかったため都の将軍に召された。ショウブ売りを装った夫が何とか取り戻すが、故郷を目前に妻が死ぬという悲しい結末を迎える。物語を継承しようと約20年前、地区住民が塚周辺にショウブを植える活動を始めた。
しかし、2013年ごろから住民の高齢化などで手入れができなくなり、一帯が荒れた。地域資源を見直そうと21年から東出雲公民館(松江市東出雲町揖屋)の呼びかけで地区外の住民も加わり再整備を始めた。
昨年は十数本しか咲かなかったショウブが、今年は色や形の違う300本以上に増えた。1600株が植わっていた11年前と比べると物足りないが、来年以降には株が増えてさらに咲き誇る予定だという。
塚の周辺は月に1度、住民ボランティアらが手入れする。9日は住民や東出雲中学校ボランティア部の約30人が草刈りした。同中3年の石原未遥さん(14)は「地域の皆さんが大切にしてきたものをきれいにできてよかった」と話した。(原暁)