コンテナ内で経理仕事をする元林信勝さん
コンテナ内で経理仕事をする元林信勝さん

 1996年の設立当時からポップサーカスを支え、団員と苦楽をともにしてきたのが経理部長の元林信勝さん(71)。広報や団員のスカウトにも携わり、屋台骨を担ってきた。

 最大の危機は新型コロナウイルス渦の3年間。休演を余儀なくされ「サーカスの繁忙期の年末年始に家に帰ったのは何十年ぶりだった」と振り返る。ほとんどの団員は帰国し「不透明のまま仕事をした」と苦しい日々だった。

 再開のめどが立ったのは昨夏。それからは荒波のような日々だった。コンテナに保管していた機材を確認すると、音響や照明の8割が故障。客席も4割程度が壊れており「実際にテントを張ってみないとわからない怖さもあった」。それでも、サーカス復活のために奔走した。

 新しく団員をスカウトするため、パフォーマー候補の演技を動画でチェック。目にとまった演者とコミュニケーションをとり、協調性を確認した。直接スカウトに行ったこともある。ラジオ出演やイベント司会も精力的にこなした。

 サーカスの世界で日本人パフォーマーは少数。「世界で活躍する人材を」という思いから、サーカスで働きながらハイレベルな技を学ぶことができる制度も導入。現在は5人の訓練生が奮闘する。

 「第一線からは引かないとね」と笑うが、松江公演でも猛暑の中、率先し来場者や団員に声をかける姿は年齢を感じさせない。これからもサーカスとともに走り続けるつもりだ。(林李奈)