安来節のどじょうすくい踊りに腹を抱えて笑ったという。1922年11月に来日したアルバート・アインシュタイン(1879~1955年)だ。北九州市の「門司俱楽部」であった歓迎会での話。お礼に得意のバイオリンで返礼したとの逸話が、当時の新聞記事に残っている。
出版社・改造社の山本実彦社長(1885年~1952年)の招待を受けての訪日。神戸港に入り、京都や仙台、名古屋、奈良に広島など43日の滞在中、各地で歓待を受けた。残念ながら山陰両県への立ち寄りはないが、どじょうすくい踊りはアインシュタインの心に残ったはずだ。
後日、アインシュタインは雑誌「改造」に8㌻にわたって訪日の感想を寄稿。日本の自然や日本人を褒める中、「一つだけ心にかかっている」として、日本が西洋化することを懸念した。そして、日本が持つ「生活にほどこされた芸術的造形、個人的な欲の抑制と質朴、日本人の心の純粋と静謐(せいひつ)」を「西洋に優る偉大な財産」と表し、守り続けることを「願わくば忘れないでほしい」と謙虚に求めた。
そんな特別な思いを持つ日本に、...