松江市学園南1丁目の旧島根県立プール跡地広場特設大テントで開催中のポップサーカス松江公演(山陰中央新報社、TSKさんいん中央テレビ主催)で、5カ国語を操るスロバキア出身のパトリシアさん(44)がパフォーマーと通訳の「二刀流」で活躍している。ステージ上では「早着替え」で会場を盛り上げ、裏では演出と演者の橋渡し役として奮闘。自身も3度目の松江は、お気に入りの街で「たくさんの人に楽しんでほしい」と意気込む。 (井上雅子)
パトリシアさんは母国で、美容師やファッションモデルとして活動。2003年ごろにモデルの仕事で来日し、パフォーマーのルイージさんと知り合い結婚。夫が所属するポップサーカスにスタッフとして入社することになった。当初は、売り子として働いていたが、語学力が見込まれて案内役のリングマスターに抜てきされ、必死に演技を学んだ。
日本語習得には、地道な努力があった。最初は「どういたしまして」が読めないほど分からなかったが、宇多田ヒカルさんや徳永英明さんの曲の歌詞をノートに書き写し意味を覚えた。「特に『が』と『は』の使い分けが難しかった。今では平仮名と片仮名は書けるし、漢字もちょっと読める」。チリ出身の夫からスペイン語も学び、母国語と英語、ロシア語も含め5カ国語に対応する。
松江公演では一瞬でさまざまな衣装に着替えるパフォーマンスを披露。会場に驚きと笑いを届ける一方、ステージから降りると、通訳の仕事が始まる。リハーサルでは、日本人の演出担当者から細かい指示が伝えられ、13カ国から集まったパフォーマーに合わせて言語を変えてニュアンスまで丁寧に説明。よりよい舞台づくりに全力を尽くす。
公演以外でも、スカウトやパフォーマーの就労ビザの手続きにも携わり、大車輪の働きで、サーカスの下垣純・営業二部長(47)は「日本と海外をつなぐありがたい存在」と評価。パトリシアさんは「忙しく大変な仕事だけど、お客さんの驚いた反応を見るのが喜び」とやりがいを強く感じている。
「当初は3カ月だけ試しに住むつもりだった」という日本暮らしは20年がたった。全国各地を回る中で日本の城に魅せられ、オフの時間には、松江城周辺で散歩する。「松江はきれいで、優しい人が多い」と好きな街の一つだ。
松江公演もいよいよ終盤に入った。「現実の世界を忘れて、サーカスの時間を楽しんでほしい」と来場を呼びかけ、自身もラストスパートをかける。
公演は18日まで(毎週木曜と、6日は休演)。
「きょうの公演」 ▽1回目=午前10時~同11時50分
公式サイト「ポプチケ」でチケット販売中。当日券あります。場所は松江市学園南1丁目の旧島根県立プール跡地広場、問い合わせは松江公演事務局、電話0852(67)7960。