出雲市西郷町の西尾ツネ子さん(91)は雲南市加茂町が発祥の地とされる民謡「出雲追分(おいわけ)」の師範昇格試験に合格した。師範になれるのは毎年、受験者全体の10%前後と狭き門。健康のためにうたい続けた成果が表れ西尾さんは「『まさか』と驚いた。継続は力なりだ」と笑顔を見せた。
出雲追分は安来節の一座を組んで全国を巡業していた加茂町出身の初代出雲愛之助が、宍道湖の舟唄と長野県の馬子唄を基にして昭和初期にうたい始めた、とされる。
西尾さんは64歳の頃に現在、出雲追分の「大師範」として活動する弟から唄を勧められたのを機に「ぼけ防止のため」と歌い始めた。月2回、近くのコミュニティセンターで開かれる教室に通って独特な節回しが特徴の唄を習得。2008年、準師範になった。
その後、計7回、師範への昇格試験に挑んだがいずれも高い壁が立ちはだかった。15年の挑戦を最後に昇格は諦め、健康維持を目的に続けた。
今年の試験から70歳以上を対象にした師範の下に当たる称号「師範寿」ができることを知り「もう一度やってみよう」と8年ぶりに意欲が湧いた。雲南市内であった師範昇格試験で安定感のある音程や声色、節回しが審査員の高い評価を得た。12人が参加した中で唯一、師範寿ではなく師範として認められた。
「唄は確かに健康に良い」。はっきりとした口調と真っすぐな背筋はとても90歳を超えているとは思えない。(藤原康平)