▽貴重な洋画一堂に
モネをはじめとする数々の貴重な洋画を集めた企画展「住友コレクション名品選-フランスと日本近代洋画-」が松江市袖師町の島根県立美術館で開かれ、美術ファンの目を楽しませている。同美術館の柳原一徳専門学芸員にお薦めの6点を紹介してもらった。(作品はいずれも泉屋博古館東京蔵)
開催概要
◇会期 11月6日(月)まで ※火曜休館
◇会場 島根県立美術館(松江市袖師町)
◇観覧料(常設展セット)
前売り券 一般千円、大学生780円、小中高生300円
※取り扱いは山陰中央新報社の本社、西部本社、各総局、支局で一般のみ。島根県立美術館のオンラインチケット、ローソンチケットで一般、大学生、小中高生
当日券 一般1300円、大学生千円、小中高生400円
◇問い合わせ 島根県立美術館、電話0852(55)4700
主催 山陰中央新報社、島根県立美術館、日本海テレビ、SPSしまねグループ
《サン=シメオン農場の道》 クロード・モネ、1864年
住友春翠が1897(明治30)年にパリで購入した2点のモネのうちのひとつで、日本にもたらされたモネの実作としては最初期のもの。もう1点の《モンソー公園》(1876年)が印象派以後の作品であるのに対し、こちらは印象派以前の若描きである。
《静物(プラム)》 オーギュスト・ルノワール、1905年ごろ
印象派の画家として有名なルノワールは、晩年南フランスに移住。リウマチなどの病気に悩まされながらも、伸びやかな筆遣いと明るい色彩で身の回りの風景や静物を描いた。戦時中に住友友成(春翠の次男)によって購入された一枚。
《グレーの森》浅井忠、1901(明治34)年 ※前期展示(10月9日まで)
フランス、ロワン川沿いの小村グレー。牧歌的な風景が見られるこの地は多くの画家たちをひきつけ、日本近代洋画の礎を築いた浅井忠もみずみずしい水彩画を描いている。帰国後、浅井は春翠の支援を受けて関西美術院を設立した。
《こだま》和田英作、1903(明治36)年
暗い森の中、半裸の女性が耳に手を当てこちらを見つめている。画題はギリシア神話で美少年ナルキッソスに失恋し声のみ残して消えたニンフ、エコー(「こだま」の意)。和田の5年に及ぶフランス留学の成果として制作され、好評を博した。
《ネルのきもの》 渡辺與平、1910(明治43)年
新聞の挿絵で流行作家となった渡辺與平は、当時竹久夢二と人気を二分するほどだった。この油絵は前年に長女を出産した妻を描いたもので、文展で三等賞を獲得。が、わずか2年後、與平は結核のため22歳で帰らぬ人となる。
《金太郎遊行図》 小杉放菴、1942(昭和17)年
「和魂洋才」の教えを受けた放菴は、油絵で日本的なものを表現しようとした。住友家の玄関を飾る壁画として依頼されたこの絵でも、日本画を思わせる独自の表現が見られる。孫をモデルに描いた金太郎の表情も朗らかな一枚。