その名の通り、地域公共交通の「再生」につながるのか。
改正地域公共交通活性化再生法がきょう、施行される。自治体、鉄道事業者が入った再構築協議会を国が設置し、赤字路線の存廃、バス転換について国主導で話し合うことが柱になる。
協議の対象は、1キロ当たりの1日平均乗客数を示す輸送密度が千人未満の線区が中心。2021年度実績に当てはめると、山陰両県関係の6路線では、木次線(宍道-備後落合)153人▽因美線(東津山-鳥取)991人-の二つが該当。山口線(新山口-益田)も1072人と、ボーダーラインぎりぎりだ。
早くも協議会設置に向けた動きが出ている。JR西日本は8月、利用が低迷する岡山、広島両県にまたがるJR芸備線の備中神代(岡山県新見市)-備後庄原(広島県庄原市)間について、協議会の設置を国に要請する方針を表明した。具体的な区間を対象に挙げたのは初めてだ。
同区間の詳細な輸送密度は、備中神代-東城80人▽東城-備後落合13人▽備後落合-備後庄原66人-といずれも2桁台と低迷。表明時にJR西地域共生部の須々木淳次長は「法施行後、速やかに国に要請したい」と述べており、早晩、沿線自治体側の対応が焦点になる。
現在は俎上(そじょう)に載っていない木次線だが、備後落合で結節する芸備線の動向は対岸の火事ではない。木次線のうち出雲横田-備後落合の輸送密度は、JR西管内で2番目に少ない35人にとどまる。沿線自治体などでつくる木次線利活用推進協議会会長の石飛厚志雲南市長も「芸備線の存廃は木次線にも影響する」と警戒する。「芸備線の次は木次線」と考えるのが自然だ。
協議会では利用促進も検討材料に含まれているとはいえ、現実的な方向性として考えられるのが、第三セクターや上下分離方式による鉄路維持か、代替バスへの転換である。
参考になるのが11年の豪雨で被災したJR只見線の会津川口―只見間(27・6キロ)だ。福島県奥会津地方の山あいを走る路線で、JR東日本は鉄道再建に難色を示しバス転換を推したが、観光利用を重視する沿線自治体が鉄路での再開を要請。福島県が線路や駅舎を保有し、JR東が運行を担う「上下分離方式」で昨年10月に運行を再開した。JR東にとっては負担軽減になる半面、県や地元自治体が毎年約3億円を負担する。
木次線が正式に協議対象となり、上下分離方式を採用するのなら、明確な集客戦略と財政面での覚悟が必要になる。
一方のバス転換も危うさが潜む。18年3月末で廃止されたJR三江線(江津-三次)の沿線自治体はバス転換を選択。「小回りが利き利用しやすい」という触れ込みだったが、実際の利用は低迷し、路線撤退が相次ぐ。
バス業界は慢性的な運転手不足にあえぐ上、来年には運転手の時間外労働の上限が課される「2024年問題」も控えており、永続的に代替交通としての役割を担える保証はない。
一方で、新たな動きも出ている。滋賀県の三日月大造知事は公共交通を支えるコストを全県民で負担する「交通税」構想を提唱している。地域公共交通の「再生」に向けては、これまでにない発想が欠かせない。