イラスト・堀込和佳
イラスト・堀込和佳

 横倒しになったトラクターの下敷きになるなど、農作業中の事故が多発している。2019年の就業人口10万人当たりの死者数は16.7人で、全産業の平均(1.3人)を大幅に上回る。本格的な農作業シーズンに入り、農林水産省は状況の深刻さや対策の必要性を広く呼び掛けている。

 同省によると、19年に農作業中の事故で死亡したのは281人。うち88%は65歳以上だった。単独事故が多いのも特徴で、農業機械を運転中に用水路に転落したり、回転する部分に巻き込まれたりする例が目立つ。

 10万人当たりの死者数は増えており、建設業(5.4人)の3倍となるなど、他産業との差は開いている。同省の生産資材対策室は「原因は高齢化だけではない。農地や農道の安全対策など、幅広い観点から対策強化の必要がある」と話す。

 トラクターなどが低速で公道を走っている際、自動車と衝突する事故も少なくない。夜間は後続車から発見されにくいため、同室は「農業の従事者だけでなく、周囲を通過する人も注意してほしい」と説明している。