体を投げ出してボールを止める技術を指導する鈴木勝久さん(左奥)=浜田市上府町、サン・ビレッジ浜田
体を投げ出してボールを止める技術を指導する鈴木勝久さん(左奥)=浜田市上府町、サン・ビレッジ浜田

 明誠高校サッカー部の外部コーチを務める鈴木勝久さん(43)=益田市遠田町=が立ち上げたゴールキーパー(GK)スクールが今年で10年を迎えた。益田市内で始めた教室は島根県内にとどまらず、山口と宮崎、鹿児島各県を加えた計6教室に拡大。専門の指導者が少ないGKの技術を伝え、子どもたちの上達を支える。

 「ボールまでの最短距離を意識して」。浜田市上府町のサッカー場サン・ビレッジ浜田での夜間練習。体を投げ出してボールを止める練習に励む中学生7人に鈴木さんが声をかける。

 京都府出身で、親の転勤で益田市に移った。小学4年からGK一本で、市内の社会人チーム・石見FCでは天皇杯や国体に出場。ただ、基礎や位置取りを教わった経験はほぼなく「失点すれば一番に怒られ、苦しかった」と振り返る。

 GKはキャッチングだけでなく、他の選手への声かけ、攻撃の起点となるキック能力が必要とされる。23歳から益田市内のジュニア選手に指導してきたが、専門性を高めたいと2013年にスクールを設立した。

 知人の協力を得ながら続け、当初数人だった受講生は100人を超す。教室も益田や浜田、出雲のほか、かつて指導した縁で県外高校の卒業生もコーチに加わり、8人で指導する。

 指導では選手に考えさせる方法を重んじる。この日のテーマは、向かって右斜めからのシュートの防ぎ方。コースを限定させるために必要な動作を話し合った。浜田一中の西川颯良さん(13)は「反応が良くなり、公式戦でPKをストップできた」と喜ぶ。

 GKは一つのミスが失点に直結する責任を負う一方、自主性が育つポジションという。鈴木さんは「受講生が試合中に感じる不安を和らげる指導を続けたい」と意気込んでいる。(宮廻裕樹)