大塚順彦さん
大塚順彦さん

山陰と台湾、新時代のインバウンド
個人旅行受け入れに商機

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が15、16日、松江、米子両市であった。インターバウンドカンパニー(台湾・台北市)代表の大塚順彦氏が「山陰と台湾 新時代のインバウンド」と題して講演。台湾の観光客は地方に注目しており山陰両県にとってチャンスだと強調した。要旨を紹介する。

 新型コロナウイルス禍前にインバウンド(訪日客)が最も多かった2019年、台湾の宿泊者数は中国に次いで2位だった。台湾人旅行者は「超リピーター化」しており、東京や京都、大阪など主要観光地は既に旅行済み。最近のニーズは静かで誰もいない所だ。かつては団体客を大型バスで連れて回る方法が主流だったが、これからは海外個人旅行(FIT)にシフトする。

 台湾人は日本に対し、観光ではなく「日常」を求めている。具体的には、静かな山間部や小さな旅館に連泊しながら地元住民と交流したり、ローカル鉄道に乗り地元スーパーで買い物したりといった体験だ。島根県でもエリアを決めてテーマ性、ストーリー性を持たせてミニツアーの絵を描くとよい。

 「本物」に対するリスペクトもあり、技術者の手仕事に触れる機会や、島根県奥出雲町の日本刀づくりの現場や、雲南市吉田町のたたらのゆかりの地なども大変喜ばれるだろう。

 官民ともに台湾の市場を見極め、手を打つマーケッターがあまりいない。日本の観光行政はどちらかというと、着地のコンテンツには補助金を出すが、どのように連れてくるのかといった視点が欠けている傾向にある。

 お金を払ってくれるのは旅行会社ではなく旅行者。旅行者が置き去りにされているところが課題であり、向き合えば商機はある。

(多賀芳文)