娘は生後100日でこの世を去った。斎藤無冥(58)にはその時の記憶が欠けている。息を引き取った瞬間から、思い出す景色は真っ白で、どうやって家に帰ったのかも分からない。ただ、小さな亡きがらに優しく声をかけ続ける妻の表情だけは覚えている。数カ月後、斎藤はその妻を置き去りにして家を出た。

 ボディーボードを通じ、宮城県の海岸で2人は出会った。妻は12歳年下で、実家は裕福な畜産農家。2000年6月に婿入りした。妻は美容師の免許を取って働き、農業者と...