ダイハツ工業が車両の安全性を確認する試験で不正をしていた問題は、軽自動車保有台数の割合が高い山陰両県にも大きな影響を及ぼしそうだ。「全車種販売停止」をニュースで耳にした両県の自動車販売店や関連工場の関係者は20日、商談中の顧客への対応や今後の生産計画の検討に追われた。
「詳しいことが決まったらお伝えします。しばらくお待ちください」。島根県東部の自動車販売店は20日、ダイハツ製の新車の商談中だった顧客らに電話で連絡を入れた。店頭ではダイハツの中古車も10台以上扱う。男性店主(51)は「今月納車する顧客もいるが、メーカーから詳細を聞いておらず、現時点で対応方法が分からない」と口にした。
島根県内のダイハツ車取扱店を統括する島根ダイハツ販売(松江市浜乃木6丁目)の広瀬義宏社長は取材に対し「われわれも(内容が)分からない状態だ。今後の対応が決まり次第、利害関係者に丁寧に対応したい」と述べるにとどめた。
国土交通省中国運輸局によると、両県の軽自動車保有台数(11月末時点)は島根24万9654台、鳥取30万104台。全車種に占める比率は島根が54%で全国5位、鳥取が53%で7位と高い。両県共にメーカー別でダイハツの占有率はトップクラスにある。
浜田市朝日町の男性会社員(24)は軽自動車で安心できるブランドとして2021年4月に新車の「タフト」を購入。「自分の車も不正データが使われていたのではないかと疑ってしまう。不安になるし、気に入って乗っているだけにショックだ」と話した。
エンジン部品など製品の半数近くをダイハツ工業向けに製造する、ダイハツメタル出雲工場(出雲市神西沖町、従業員約580人)の橋本公成工務部長は「出荷停止の期間によるが、ダイハツ向けの製造ラインを停止させるなど影響が出るかもしれない」と話した。
原因が検査の不正だったことについて「親会社の不正だが、製品の品質保証は重要。われわれも検査体制、コンプライアンス遵守を徹底していく」とした。週明けにも今後の方針を従業員に説明するという。(取材班)