この連載も最終回だから、一番好きなものを取り上げるね。不条理な夢の世界を描く―。この「ねじ式」の冒頭シーンは大げさではなく、日本美術史上最高の芸術表現だと思うんだ。

 あれは高校の修学旅行のときのこと。宮崎から広島へ帰途につく前に駅前の本屋で、文庫版のつげ義春作品集を2冊買い求めた。夜行列車の車中で読んで「なんだこれは」。とんでもないものに出会ってしまったという衝撃を、昨日のことのように覚えている。...