亡き長男への思いを込めた「隠岐の盆~シャーラ船~」などを収録したDVDを手にする西脇恵子さん=島根県西ノ島町別府
亡き長男への思いを込めた「隠岐の盆~シャーラ船~」などを収録したDVDを手にする西脇恵子さん=島根県西ノ島町別府

 ♪強く生きる約束を 哀しい心 置き去りに―。島根県西ノ島町美田のスナック経営・西脇恵子さん(68)が、亡き長男への思いを込めオリジナル曲をCD化した。5年前に39歳の長男をがんで失い、落ち込む日が続いたが「カラオケ好きだった息子のためにも」とマイクを握った。長男と約束した「強く前向きに生きる」との思いを胸に、笑顔で客を迎える。

 同町出身。夫の誠さん(73)と大工として働いていたが、20年ほど前に知人の勧めで転職し、「ママの務め」として苦手だった歌に励むようになった。

 CD作りのきっかけは、境港市の観光関係者の訪問だ。別府港に近い店「FLAPPER(フラッパー)」で伸びやかな歌声に聞きほれ、西脇さんにCD制作を提案。米子市の歌手兼作曲家・石田光輝さん(71)に作曲を、同町の鏡谷寿美江さんに作詞を依頼し、由良比女神社の桜や国賀海岸の夕日など、島の風景を歌詞に織り込んだ演歌「島灯(あか)り」が完成した。

 ところが、録音を控えた2016年に長男・優さんのがんが発覚。西脇さんは余命1カ月との病状を本人に告げ、自宅で看護した。優さんはカラオケ好きで、亡くなる1週間ほど前まで知人や家族に囲まれ、マイクを手にしたという。

 再び歌に向き合うきっかけは19年に米子市であった石田さんのコンサート。がんを患いながら歌う石田さんの姿に勇気をもらった。

 石田さんらの協力で、優さんや先に旅立った人への思いを込めた「隠岐の盆~シャーラ船~」と「島灯り」を収録したCDを制作。病床の優さんと西脇さんが握手する姿や、先祖の霊を船で海へ送る島の伝統行事「シャーラ船送り」の風景が入ったDVDも仕上がり、今年2月に常連客らへ配った。

 西脇さんは「たくさんの方の協力でDVDが完成したことに感謝している。スナックは元気になって帰ってもらう場所で島の灯り。お客さんの前で泣いてばかりいられない」と話す。悲しみを心にしまい、今後も島民や観光客を柔和な笑顔で迎えるつもりだ。