昨夏のベネチア国際映画祭での上映を皮切りに、釜山や東京などの国際映画祭に出品された杉田協士監督の新作「彼方(かなた)のうた」は、説明を排することで、一人の女性の過去に思いをはせることへと観客をいざなう不思議な作品だ。
「普段から人は何を思っているか分からないまま、相手のことを探っている。映画だからってずるをしたくない」と杉田監督。「登場人物たちのことを理解した気になりたくないんです」
主人公は書店員の春(小川あん)。道を訪ねるふりをして不意に女性(中村優子)に話しかけたり、ひそかに男性(真島秀和)の後をつけたり。その行動は不審にも感じられるが、...