石川県輪島市で給水を受ける女性。被災地では水道管や浄水設備が損傷し、続く断水が大きな課題になっている=14日
石川県輪島市で給水を受ける女性。被災地では水道管や浄水設備が損傷し、続く断水が大きな課題になっている=14日

 能登半島地震は発生から3週間を超えた。被害の全容はまだ把握できておらず、安否不明者が残る。交通網は寸断され、半島北部の自治体では、ほぼ全域で断水が続く。今なお約1万5千人の住民が避難所などに身を寄せ、被災地から離れたホテルなどへの2次避難も始まっている。

 衆参両院の予算委員会で、能登半島地震をテーマに閉会中の集中審議が行われた。初動から3週間の対応を検証し、問題点を洗い出すことが、まず必要だ。その上で、被災者支援や今後の生活・地域経済の再建に向け、与野党の立場を超えて知恵を出し合ってもらいたい。

 岸田文雄首相は「国としてできることは何でもする。早期復旧に全力で取り組みたい」と述べ、25日に被災地支援の政策パッケージをまとめると表明。1500億円規模の予備費支出も決定する方針を明らかにした。

 ただ、問題は首相が言うような政府の取り組みが、現場できちんと機能しているかだ。

 与野党の議員がそろって取り上げたのが「水」の問題だ。石川県の21日の発表によると、被害が大きかった6市町の水道復旧は2月末~3月末で、遅い所では4月以降になる見込みだ。立憲民主党の泉健太代表は、避難所に届けられた飲料水がトイレ用には使えないなどの問題が起きていると指摘。公明党の中川宏昌氏も「水は生活の全ての源だ」と述べ、復旧を急ぐよう求めた。斉藤鉄夫国土交通相は「全国の自治体から技術者を増員する」と述べたが、早急な対応が求められる。

 初動対応も取り上げられた。首相は2016年の熊本地震で初めて導入された、被災地の要望を待たずに緊急物資を送る「プッシュ型支援」に震災直後から取り組んでいると強調した。とはいえ、与野党議員からは「全国から救援物資が被災地近くまで来ているが、避難所では求める物資が足りていない」「各地で目詰まりが起きている」との指摘が相次いだ。

 立民の杉尾秀哉氏が初動での「自衛隊の派遣が遅く、少なかった」と指摘したのに対し、首相は「地理的な制約の中でも初動対応に遅れはなかった」と反論した。

 しかし、熊本のような内陸で起きた地震と違い、今回は能登という細長い半島で起きた。道路が寸断され、支援物資の輸送や自衛隊移動の障害となったのは事実だろう。地震はどこで起きるか分からない。半島のような被災地を想定した支援計画は十分だったのか。

 自治体支援に関して、首相は「各省庁の幹部クラスの職員を派遣し、現地に『ミニ霞が関』をつくるよう体制整備した」と述べたが、自治体職員自身が被災者となり、人手が足りていなかった。人的支援の在り方も再検証する必要があろう。

 立民、日本維新の会、国民民主党は住宅が損壊した世帯への支給額に関し、現行の最大300万円を600万円に倍増する被災者生活再建支援法の改正案の共同提出で合意。泉氏は「政府として引き上げを検討するのか。議員立法に委ねるならば超党派で議論したい」と迫った。首相は「追加的支援を総合的に検討する」と述べただけだ。指導力を発揮すべきだ。

 現地の避難所と2次避難の人々、仮設住宅建設や生活・経済再建と課題は広がり、増え続ける。与野党で議論を重ね、丁寧な対応を尽くしたい。