自民党が公表した派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る内部調査結果の写し
自民党が公表した派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る内部調査結果の写し

 これで実態を把握したとでも言うつもりだろうか。アンケートは形式的な設問だけ、議員への聞き取りも身内の党執行部ではお手盛り批判は免れず、「調査」という名に値しない。

 自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件で、全議員アンケートに続き、政治資金収支報告書に不記載があった安倍、二階両派(解散を決定)議員ら計91人に実施したヒアリング調査の結果を公表した。

 2022年までの5年間で収支報告書への不記載があったとアンケートに答えたのは85人(うち現職は82人)で、総額は約5億8千万円。

 聞き取り調査の報告書によると、派閥から還流されたカネを議員自ら認識していたのは32人で、うち11人は収支報告書への不記載を認識していた。安倍派では派閥の事務局から収支報告書に記載しないよう指示されたと多くの議員が説明。違和感を抱き記載を申し出た議員も複数おり、本当に事務局だけの判断だったのか、疑問が残る。

 派閥の幹部も含め証言はすべて匿名のため、個々の議員の裏金への認識や関与の度合いが分からず、真相の解明にはほど遠い内容だ。

 安倍派の還流システムは、パーティー券の売り上げをいったん派閥に渡し、ノルマ超過分を現金でキックバックする方式と、ノルマ分だけ派閥に納め、残りは議員側が保管する中抜きの二つ。後者のケースは32人に上っており、派閥のパーティー券を売りながら、自身の懐に入れる行為は極めて悪質だ。

 使途についても会合費、人件費、手土産代などから、車両購入費まで多岐にわたり、いかに重宝していたかがうかがえる。一方、報告書は、遅くとも十数年前、場合によっては20年以上前から行われていた可能性に言及した。組織的な裏金づくりの闇は深く、19年前には一部で報道されていながら、漫然と継承してきた罪は重い。

 前身の森派の会長を務め、安倍派に強い影響力を持つ森喜朗元首相は調査の対象外で、今回の調査はアリバイづくりと指摘されても仕方あるまい。ヒアリングで安倍派議員からは、幹部の責任を問う声も多かったという。

 裏金づくりの核心部分は、なぜ収支報告書への不記載を指示したのか、違法な処理を続けたことに派閥幹部の関与はなかったのか、還流された裏金の詳細な使途―である。これらが何一つ解明されていないのだ。

 安倍派の議員は一斉に収支報告書の訂正を総務省などに届け出たが、「不明」としたままの支出や繰越金を計上するケースが続出、民間企業ではあり得ない会計処理がまかり通っている。これを許せば、政治とカネに絡む不祥事を絶つことなどできるわけはない。

 同時並行的に政治資金規正法の改正など再発防止策を与野党で論議するにしても、実態の把握が「抜け道」をふさぐ大前提となることを忘れてもらっては困る。

 国会は、疑惑をもたれた議員が自ら弁明し、責任を明らかにする場として衆参両院に政治倫理審査会を設置している。多額の「使途不明金」を抱えながら、説明から逃げ回るのであれば国会議員としての適格性が疑われる。

 少なくとも安倍派の幹部や二階俊博元幹事長らに国会で説明させ、メスを入れ、積年のうみを出すときだ。