カナダの音楽ユニット、デレリアムは1997年のアルバム「カルマ」で名を上げた。エニグマやディープ・フォレストのように宗教音楽や民族音楽とエレクトロビートを組み合わせながら、ゲストの女性歌手を前面に出し、ポップさも併せ持つ傑作。収録曲「サイレンス」がヒットした。
「サイレンス」はグレゴリオ聖歌とエレクトロビートの取り合わせに哀愁漂うギターを加え、歌手サラ・マクラクランがゆったりと包み込むように歌う。ほかにも幻想的な癒やし系の曲が並ぶ中、とりわけ興味深いのが「フォーガットン・ワールド」。デッド・カン・ダンスのボーカリスト、リサ・ジェラルドの呪術的な歌を加えて暗い雰囲気も醸しながら、柔らかく透明感のある曲に変化する。
初期のデレリアムはデッド・カン・ダンスのようなダーク路線だった。例えば90年のアルバム「シロフェニカン」。収録曲の「エンボディイング」はおどろおどろしいパーカッションが鳴り響き、呪文のような声は入るが、歌はない。「ミソス」はインダストリアル系の不気味な曲で、機械や叫び声のような音が入る。
だから「フォーガットン・ワールド」は初期のダークさを織り交ぜつつ、聴きやすく仕上げたデレリアムの進化が感じられるのだ。
(志)