愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。内部の個室が外から見えにくい(TOTO提供)
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。内部の個室が外から見えにくい(TOTO提供)
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。小便器用(左)と男女別の個室が並び、多様な選択肢を用意する(TOTO提供)
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。小便器用(左)と男女別の個室が並び、多様な選択肢を用意する(TOTO提供)
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。内部の個室が外から見えにくい(TOTO提供)
愛知県豊川市立中部小学校の「みんなのトイレ」。小便器用(左)と男女別の個室が並び、多様な選択肢を用意する(TOTO提供)

 「汚い、臭い、暗い」というイメージが強い公立学校のトイレ。だが近年は便器の洋式化をはじめ、明るい室内、性の多様性に配慮した構造などが登場し、一部の自治体で進化を始めた。トイレの環境が子どもに与える影響も指摘されており、健康と心を守る空間として見直されている。

 車いすで使える多機能トイレの個室を9割超の小中学校に設置するなど、2016年度から先進的な改修に取り組む愛知県豊川市。性の多様性に対応する工夫も凝らす。

 市立中部小学校では、特別支援教室付近に通称「みんなのトイレ」を設けた。男女別だけでなく男女共用、小便器用、多機能用の個室が並ぶ。誰が、どの個室を使うかは外から見えない構造だ。

 「家のトイレみたい」「きれい」など、肯定的な児童の感想は多いという。教頭の小林敦世さんは「校内にあるだけで、児童の安心感につながる印象がある」と話す。

 石川県かほく市も小中学校で全洋式化を進める。市立外日角小学校では明るい室内に、感染予防に有効な非接触式の手洗いカウンターを配置。楽しい雰囲気を目指した。

 文部科学省は近年、憩いの場、他者への思いやりを学ぶ場としても環境改善を呼び掛ける。20年の調査で全公立小中の洋式の割合は57%となり、和式を逆転。だが自治体予算では校舎の耐震化が優先され、トイレ改修は後回しになりやすく、豊川市、かほく市のような例はまだ珍しいという。

 「誰もが落ち着ける、いい意味で〝逃げ場〟になる空間であってほしい。今後は個室化、共用化など多様な選択肢作りが求められる」。そう語るのは、TOTOなどトイレ関連6社でつくる「学校のトイレ研究会」事務局長の河村浩さんだ。

 同研究会では衛生面の研究データや現場の声を収集し、文科省に報告。河村さんは「子どもは一度『汚い』と思うだけで、排せつを我慢してしまう」と、改善が行き届かない現状を懸念する。

 汚いトイレが「陰湿なコミュニケーションの温床」になることも。同研究会が2010年、洋式化した大阪府内のある小学校で実施した調査では、改修後に「大便をするとからかわれるから我慢する」と答えた児童が7人から0人に減った。

 いじめ問題に詳しい上越教育大の高橋知己教授(学校心理学)は「教員の目から死角になりやすく、子どもたちの公と私が混在する複雑な空間」としてトイレの環境を重視。子どもにとって安らぎの場にも、恐怖の場にもなると警鐘を鳴らす。

 「設備の改良、教員らとの共用化などが進めば、トイレが〝見える化〟され、子どもの安心、ストレス軽減につながる」と指摘。学校側の人権意識が反映される場とも捉えており「トイレ自体が、マナーやジェンダーを考える大切な教育に結び付く」と話している。