業務に起因する従業員の腰や膝などの痛みを未然に防ぐ健康経営支援の会社を島根県内の作業療法士2人が立ち上げ、サービス提供を始めた。痛みを引き起こす根本原因を事前に突き止め、改善指導する珍しいビジネスモデル。企業の健康経営に対する意識が高まる中、顧客開拓を進める。
雲南市内の訪問介護事業所に勤めていた作業療法士の藤井寛幸氏(32)が島根リハビリテーション学院(島根県奥出雲町三成)の作業療法学科長だった元広惇氏(34)と共に、Canvas(キャンバス、雲南市木次町里方)を3月に設立した。
本年度の県の「島根発ヘルスケアビジネス事業化補助金」にも採択され、200万円の交付を受けて事業体制やサービス内容の充実を図る。現在は島根県東部の製造業など10社がサービスを試験導入している。
従業員の腰痛などの症状を緩和する企業向けサービスはあるが、同社は労働環境の実態から将来的な痛みの発生を予測し、作業改善を指導する。業務風景を撮影した映像や従業員への聞き取りを基に、県内外の病院、大学の研究員や理学療法士ら5人でつくるチームが分析。1時間に1回のリフレッシュタイム設定や、重い物は地面ではなく、腰の高さの台に置き持ち上げる際の負担を減らす工夫などを提言している。
期間や従業員数、訪問回数など契約内容に応じ、基本料金は30万円から。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の「健康宣言」事業所数は5月末時点で島根県1176社、鳥取県2355社となり、この1年で島根は72社、鳥取は94社増えた。腰痛予防など労働安全衛生分野の関心も高まっており、同社は本年度、20社の年間契約と売り上げ2千万円を目標に掲げる。社長を務める藤井氏は「島根発の事業モデルを構築し、全国に発信したい」と話した。 (久保田康之)