1984年の米ビルボード・アルバムチャートはたった5枚しかナンバーワンが出なかった。マイケル・ジャクソンが82年に出した怪物アルバム「スリラー」が84年になっても年初から4月まで頂点に君臨し、入れ替わった青春映画のサウンドトラック「フットルース」は1位を10週連続キープする大ヒット。8月に首位に躍り出たプリンス&ザ・レボリューションの「パープル・レイン」はクリスマスを過ぎてもその座を譲らなかった。
ロングセラーの陰で多くの好アルバムが2位や3位の最高位に泣いたその年、間隙(かんげき)を縫うようにして6月にトップに立ったのがヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースの「スポーツ」だ。翌週にはブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」に取って代わられ、1週だけで終わってしまったが、念願の全米制覇だった。
「スポーツ」はサンフランシスコ出身の彼らのサードアルバム。83年夏に発表し、「ハート・アンド・ソウル」や「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」(のちに出たレイ・パーカーJr.のヒット曲「ゴーストバスターズ」はこの曲のパクりではないかと盗作騒動に)などシングルカットを続け、1年かけてアルバムチャートを上り詰めた。

彼らが82年にリリースしたポップチューン「ビリーヴ・イン・ラブ」に魅了されたのが中学生の時で、この曲を収めたセカンドアルバム「ベイ・エリアの風」(最高位13位)は人生で初めて買ったLPレコードとなった。それ以降、今で言う「推し」のグループになっていただけに、3作目での飛躍に「ついにやった!」とガッツポーズをしたものだ。

その後、85年にマイケル・J・フォックス主演の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にヒューイ・ルイス自らカメオ出演しつつ、テーマ曲「パワー・オブ・ラヴ」を歌ってシングルチャートを初制覇。さらに、この曲を含む86年の4作目アルバム「FORE!」も2作連続となるナンバーワンになったあたりが絶頂期だった。
84年の年間アルバムチャートでは、83年に続き2年連続1位に輝いたあの「スリラー」に次いで堂々の2位となった「スポーツ」。シンプルで陽気なロックンロールが気持ちいい。爽やかなコーラスも。あれから40年がたってしまったが、なんとこの4月には米ブロードウェイで彼らの楽曲で構成するミュージカルが始まったそうだ。タイトルは「スポーツ」の収録曲から取った「ザ・ハート・オブ・ロックンロール」。楽しげなステージが目に浮かぶ。節目の年のうれしいニュースだった。(洋)