2005年11月に95歳で死去した米経営学者のピーター・ドラッカー氏
2005年11月に95歳で死去した米経営学者のピーター・ドラッカー氏

 誰しも過去に戻ってやり直したいことが一つや二つあるのではないか。それを可能にする方法として映画やドラマなどでよく用いられるのが「タイムリープ」という能力。アニメ『ドラえもん』や映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でおなじみのタイムトラベルとは異なり、現在の自分の意識だけが時空を移動し、過去や未来の自分の体に乗り移ることができる▼初めて登場したのは、昭和40年代の筒井康隆さんのSF小説『時をかける少女』だという。最近では、この能力に目覚めた不良少年が不幸な運命を覆そうと奮闘する姿を描いた漫画『東京卍リベンジャーズ』が若者を中心に大ヒット。累計発行部数は7千万部を超え、テレビアニメ化や映画化、舞台化もされた▼未来を変えたいという願いは、いつの時代も存在する。先日も米子市の伊木隆司市長が年頭あいさつで、経営学者のピーター・ドラッカー氏の名言「すでに起こった未来」を引き合いに、この先に予想されるさらなる人口減少に歯止めをかけたいと訴えた▼ドラッカー氏によれば、すでに起こった人口構造の変化は逆転しない。ただ未来につながるその変化と影響を見定め、備えることが大切なのだという▼残念ながら私たちにタイムリープの能力は備わっていない。それでも、今を生きながら未来を見通し、行動に移すことはできよう。大いに人口減少社会にあらがいたい。(文)