高知県西南部にある黒潮町。雄大な太平洋に面した町は、南海トラフ地震で最大34メートルの津波が想定される。対策として町は2017年、国内最大級の津波避難タワーを整備した。
先日、現地を視察すると、タワーはデパートの駐車場のような形をしていた。約300人が住む地元・浜町地区の半数が70歳以上の高齢者。車椅子などで避難する住民向けに、階段だけではなくスロープを併設したためだ。
「雨で滑るから直したんです」。スロープの入り口で、案内をしてくれた地元の河内香区長(74)が説明した。きっかけとなったのは、地区で年1回は実施する夜間の避難訓練。入り口付近はセメントの中に石を敷き詰め、角度もついていた。暗闇の中でぬれた路面は危険だと気付き、滑りにくい素材にした。
夜間を含め年に最低4回、避難訓練を行う地区住民の防災意識は高い。最大230人を収容できるタワー最上階8階の避難フロアは、避難後の生活に備えた備蓄品がずらり。椅子は高齢者に配慮し、背もたれのある100脚を自前でそろえる予定。年間で約千人がタワー見学に訪れるといい、1人当たり500円の視察費を物資の購入に充てる。「行政に頼るより自分たちでやる方が早い」と河内さん。
タワーを訪れた翌日の夜、青森県八戸市で震度6強の地震が発生し、黒潮町での夜間の避難訓練の話を思い出した。訓練を重ね、具体的に備えたい。(吏)













