64歳以下を対象とした新型コロナウイルスワクチンの一般接種で、都道府県庁がある47市区の94%に当たる44市区が、国からのワクチン供給に不安を感じていることが3日、共同通信の調査で分かった。一般接種の開始時期は6~7月が94%(44市区)に上る。しかし「接種計画に支障を来している」(千葉市)など、国に供給スケジュールの提示を求める声が相次いだ。
政府は、7月末完了を目指す高齢者接種と並行して64歳以下の接種を進めるよう要請。一方、市区町村で使う米ファイザー製ワクチンの輸入量は4~6月が約1億回(約5千万人)分に対し、7~9月は約7千万回(約3500万人)分で30%減る。供給が滞れば、接種事業は減速しかねない。
調査は6月28日~7月1日、47都道府県庁所在地の市区(東京都は新宿)を対象に実施した。
ワクチンを巡り「接種会場を用意してからワクチンが足りない事態は避けたい」(札幌市)、「(国に)尻をたたかれ頑張って態勢を整えたら、はしごを外された」(長崎市)という不安の声が続出した。松江市はワクチンの総割り当て数の先細りを懸念し「接種に必要なワクチンの配送スケジュールを早期に示してほしい」と要望。鳥取市も「供給量と供給時期に不安がある」とした。
64歳以下の接種開始時期は、5月は青森市、6月は富山、名古屋など19市区、7月は前橋、長野など25市、8月は那覇市。横浜市は未定で「ワクチンの供給状況などを見極めたい」とした。
終了時期の見通しを尋ねたところ、盛岡、津など6市は供給スケジュールが不透明などとして「見通しが立たない」と回答。9月は秋田など3市、10月は京都など5市、11月は鹿児島など22市区、12月は名古屋など3市。他は「10月末を目指すが供給状況による」(金沢市)などと指摘した。
一般接種のうち、12~15歳の子どもへの接種開始時期は、仙台、富山、大分など29市が未定。理由は「ワクチンの供給状況から判断する」(新潟市)、「保護者の同意の進め方など検討課題がまだあり調整中」(山形市)など。鳥取市など9市区は7月からと答え「夏休みの開始と合わせた」(和歌山市)自治体もある。8月は松江市など6市、9月は2市、10月は1市だった。
<表層深層>接種事業、急ブレーキ
新型コロナウイルスワクチンの接種促進策が暗転している。市区町村は「ワクチンが来ない」と動揺し、予約の受け付け停止などが相次ぐためだ。高齢者の約2倍いる64歳以下という「本丸」へ態勢を拡充し事業を加速させる中、国が自治体の希望通りの供給はできないと明言したことで、急ブレーキ。さらに、これまで配ったワクチンを含めたやりくりを求める。予約停止などの混乱が拡大しそうだ。
「これから先、自治体の希望量は残念ながら供給できません」。河野太郎行政改革担当相は2日の記者会見で、7月後半の2週間分の配送量は「(自治体の)希望量の3分の1」と強調した。
64歳以下の対応では「自治体に残っている在庫を使いながら、供給に応じた接種スピードの最適化をお願いしたい」と言い放った。与党関係者は「接種を減速しろという意味だ」と解説した。
変異株の流行で世界的にワクチン需要が高まっていることが背景。政府関係者は「企業向けなどの米モデルナ製の方がより厳しい状況にあるが、自治体向けの米ファイザー製も思うようには入ってこない」と証言する。
ファイザーの供給は「直前まで分からない」(政府担当者)のが実態。河野氏は「浮いているのがあれば(ファイザー社から)回していただいている」と率直に語った。
国はファイザー製は年内に9700万人分を契約しており、モデルナ製を合わせ「希望する国民へ接種できる量は確保」(河野氏)としている。「ワクチン不足」が生じるのは、自治体の会場数が増えるなどして、接種能力が向上しているからだ。
国はこれまでに配ったワクチン量から打った人数を差し引いた、自治体側が持つ「市中在庫」に目を向ける。6月末で約4700万回分(2350万人分)で、その活用などでしのげると踏む。
住民の矢面に立ち、事業を確実に進める責任がある市区町村は、受け止めが異なる。立谷秀清全国市長会長(福島県相馬市長)は、1人の接種に必要な2回分のワクチンがそろわないと、1人の1回目が打てないと言うのが自治体の習性と指摘。ワクチンが10回分あれば10人分とする国に対し自治体側は5人分と解釈する。
国の言う在庫も「一定量は、住民の2回目分などで既に打つ先が決まっているワクチン」(自治体担当者)とする。予約停止や延期は大阪市を含む大都市だけでなく、岩手県大船渡市や岐阜県中津川市、京都府向日市などに広がる。「64歳以下のワクチンが大量に必要となるタイミングに、希望の半分ももらえないことが引き金となった」(自治体幹部)形だ。
接種態勢の拡充は、10~11月に希望者全員分を打ち終えるとした菅義偉首相の発言がきっかけ。関東の自治体関係者は「冷凍庫は空だ。ワクチンが実際に来るまで信用できない」と話す。千葉県内の担当者も「供給が減れば、今ある集団接種会場の一部を閉めないといけない」と語る。石川県の自治体職員は「受け付け停止の市区町村はさらに増える」と予測した。
ワクチンの確保量を巡って、企業・大学の接種の動向も自治体の見えない負担となる。住民のうち、どれだけが職場で打つかが読めないためだ。
住民にしわ寄せがいくことを懸念する首都圏の市長は、いら立つ。「現役世代の接種のスタートダッシュができない。ノーを突き付けられるのは菅政権だ。選挙どころではなくなる」














