小泉八雲記念館(松江市奥谷町)の小泉凡館長が10日、鳥取市内で講演し、曾祖父の八雲の怪談「鳥取のふとんの話」のアイデアを提供したのは、八雲の妻セツだと明かした。セツが前夫の鳥取藩士に聞いた話を八雲に伝えたという。八雲が良き補佐役としてセツの才能を見いだした逸話だとした。
「鳥取のふとんの話」は鳥取の旅館の布団から「兄さん、寒かろう」「おまえ、寒かろう」と声が聞こえるという怪談で、兄弟の悲話が秘められている。八雲は著書で、浜村(鳥取市)の旅館の従業員に聞いた話だと記している。
小泉館長は、八雲とセツの長男が「セツが伝えた」と語っていたとし、食い違いは、八雲が著書で家族に触れるのを控えていたためで、別の記述で、セツのことを「ある女」と伏せていた例もあるという。
小泉館長は、来日前の八雲が貧乏や結婚の失敗を経験し、セツも貧乏が原因で前夫に逃げられたことに触れ「2人とも貧しさや結婚の失敗という苦労を味わった。一方、2人とも異文化に対して開かれた心の持ち主だった」と説いた。
講演は鳥取歴史振興会主催のイベントの一環で、約100人が聴いた。「鳥取のふとんの話」を題材に振興会の森本良和会長が監督した短編映画の上映、小泉館長と森本会長の対談もあった。
(桝井映志)