山陰両県の自治体間で火葬場(斎場)の使用料が大きく異なることが山陰中央新報社の調べで分かった。明確な理由は分かっていないが、大人の住民向け料金の価格差は最大1万5千円、割合にして2・5倍で、住民以外(関係市町村以外)はさらに開きがある。一方、物価高騰や人件費上昇を理由に値上げに踏み切るところが出ている。
両県の火葬場は32カ所あり、料金は条例で定める。大人の住民の場合、最も高いのは島根県海士町と鳥取県東部広域行政管理組合(鳥取市など5市町)の2万5千円。島根県隠岐の島町が2万2千円、同県邑南町が2万円と続く。
松江市斎場は2014年度まで8千円だった料金を15年度に1万4千円に改定した。担当者は「周辺自治体の価格や必要経費を踏まえ判断した」と説明する。
最も安いのは浜田、大田、安来各市の1万円。浜田市は旧金城町を除く合併前の旧4市町村に計4カ所の火葬場があり、合併時から変更していない。
大田市の場合は1989年に完成した大田葬祭場の老朽化が進行。2025年度から26年度にかけて炉の入れ替えなどの工事を予定しており、環境政策課の中原崇之係長は「25年度に審議会を立ち上げ、使用料を検討する」と話した。
各自治体は、住民と住民外の使用料に差をつけており、松江市は市民外の大人は7万6千円で、差額は両県最大の6万2千円。安来市は4万円差で、出雲、雲南各市などが3万8千円差だ。島根県奥出雲町は一律1万2千円だったが、21年に改定し、住民外は5万円(差額3万8千円)に設定した。最も差が小さいのは同県美郷、川本両町の5千円だった。

料金設定の根拠について多くの担当者は「条例制定時の議論が分からない」としており、明確な理由は不明だ。また、一般ごみ処理料など他の行政サービスの料金に比べ、差が大きい傾向にある。
物価高騰の影響を受け、鳥取中部ふるさと広域連合(倉吉市など5市町)は10月以降、料金を段階的に引き上げる。対象は倉吉市、湯梨浜、三朝、北栄、琴浦4町で、大人は現在の1万2200円(圏域外4万9900円)を順次上げて、26年4月に2万9千円(同7万8千円)とする。
同連合の上田智幸環境福祉課長は「火葬件数の増加で施設にかかる負担が増えている。適切なサービスの提供には不可欠だ」と理解を求める。
(白築昂)