ソフィー・エリス・ベクスターの2001年のヒット曲「マーダー・オン・ザ・ダンスフロアー」が、昨年公開の映画「ソルトバーン」で驚きの使われ方をしたことで今年再びヒットしたが、このノリノリのダンス・ミュージックを彼女と共作したのはグレッグ・アレキサンダー。1998年に「ホワット・ユー・ギヴ」をヒットさせ、デビュー・アルバム「ブレインウォッシュ」だけを残して解散してしまったニュー・ラディカルズのフロントマンだ。
「ブレインウォッシュ」は90年代の傑作ポップアルバムであり、共作を含め全曲を作詞作曲した彼の優れたメロディーメーカーぶりに感じ入りながら何度聴いたことだろう。解散によってバンドの新作を耳にできなくなるのは残念だったが、ロッド・スチュワートの「アイ・キャント・デナイ・イット」(2001年)や、サンタナとミシェル・ブランチのコラボ曲「ザ・ゲーム・オブ・ラヴ」(02年)など、裏方に回った彼がソングライターとして関わった曲に出合うたびに、いかにも彼らしいメロディーの心地よさに幸せを感じたものだ。
極め付きは2013年に手がけた音楽映画「はじまりのうた」の挿入歌の数々。マルーン5のアダム・レヴィーンが出演しつつ歌ったバラード「ロスト・スターズ」は文句なしの名曲だったし、俳優キーラ・ナイトレイがかれんな歌声を聞かせた「テル・ミー・イフ・ユー・ワナ・ゴー・ホーム」は、ビル屋上での心温まるバンドセッション場面も相まって、忘れられない1曲となった。(洋)