あごひげが長くむさ苦しい男らの3人組ZZ(ズィー・ズィー)トップは、男臭いブルースロックにシンセサイザーを組み合わせ好評を博した。「スリーピング・バッグ」(1985年のアルバム「アフターバーナー」に収録)は、ドン、ドン…という重々しいドラムに軽快な電子音が加わり、ギャーン…とギターが飛び込んで走りだす。
テクノやフュージョンがはやり、シンセの音があふれた時代。シンプルで武骨なロックを追求してきたZZトップがアルバム「イリミネイター」(83年)と、「アフターバーナー」で本格的に取り入れたことには批判的な見方もあったようだ。だが、この2枚はヒットして代表作となった。
ZZトップを初めて聴いたのは高校年代の頃。同級生の間ではボン・ジョヴィやガンズ・アンド・ローゼズが人気だった。周囲の誰も知らないZZトップになぜ引かれたかは覚えていない。当時、カーズが好きだったので、それに通じる車のジャケットに何かひらめいて「イリミネイター」を手にしたのだろうか。
「イリミネイター」は最高傑作。シンセが出すぎずヘビーなギターがさえる収録曲「ギミ・オール・ユア・ラヴィン」「シャープ・ドレスト・マン」「アイ・ガット・ザ・シックス」が特にいい。同様に男臭いロックバンド、AC/DCを聴くきっかけにもなった。例えば「ギミ・オール・ユア・ラヴィン」とAC/DCの「フー・メイド・フー」は雰囲気が似ていて、どちらも好きだ。
後発のAC/DCのギター奏者アンガス・ヤングはZZトップを愛聴していたらしい。片や、ZZトップのギター奏者ビリー・ギボンズは、シンプルで武骨なロックを貫くAC/DCを尊敬していたようだ。
ZZトップはその後、シンセ路線を引っ張りすぎて失速し、低迷した。不人気アルバム「XXX」(1999年)の収録曲「ドレッドモンブーガルー」はダンスビートを取り入れた異色作で、同時期のジェフ・ベックのアルバム「フー・エルス」に似た趣があり、個人的には好きなのだが…。
復活作と言えるのはアルバム「ラ・フューチュラ」(2012年)。収録曲「フライイン・ハイ」がいい。AC/DCの名曲「狂った夜」を思い起こさせ、あの頃のZZトップに戻ったなと感じた。ベース奏者ダスティ・ヒルが2021年に亡くなり、もう新作は出そうにないが、再び輝いたのがうれしい。
(志)
ZZトップ 男臭いロックにシンセ融合 <さんいん洋楽愛好会>
さんいん洋楽愛好会のバックナンバー